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FX初心者が最初にすべきポイント?その3【経済指標編】

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FX初心者が最初にすべきポイント?その3【経済指標編】

有効比率の基礎とポジションサイズについて

相場分析に欠かせない!経済指標の見方と捉え方

多くの個人投資家が日々公表されている各国の経済指標を注目しています。
それらの経済指標の結果によって、相場が急変したり、トレンドが反転したりするケースもあるわけですから、当然と言えば当然の事。

この記事では、投資をする上で経済指標をどのように理解し、売買にどう活用すればよいのかについて解説致します。

為替相場の変動要因と経済指標

為替相場の変動要因は、一般的に物価、金利、景気、国際収支(貿易収支)、通貨供給量、更に地政学リスクや政治的な要因などに加え、投機的な動きも含め様々です。
経済指標には、こういった要因の現状や今後の動向を探るためのヒントがあると考えられる為、経済指標の結果によっては相場が大きく変動するケースがあります。

物価:上昇傾向にある国の通貨は売られやすく、下落傾向にある国の通貨は買われやすい。

⇒購買力平価(PPP:purchasing power parity)で説明されます。
例えば、ある同程度の品質のボールペンがあり、アメリカと日本でそれぞれ1ドル、100円の価格であれば、理論的に為替相場は1ドル=100円です。その後、物価の上昇によりそれぞれ1.5ドル、300円に値上がりをすれば1.5ドル=300円なので1ドル=200円となります。

経済指標⇒消費者物価指数(CPI)、個人消費支出(PCE)など

金利:利上げ基調にある国の通貨は買われやすく、利下げ基調にある国の通貨は売られやすい。

⇒預金をする際に年利1%の利回りと年利5%の利回りならどちらが魅力的かは一目瞭然です。為替相場が変動しないと仮定した場合、金利の高い国の通貨で運用した方がリターンを期待できます。
キャリートレードは、金利の低い国の通貨を借り入れ、それを金利の高い国の通貨に両替して運用することを言います。

各国中銀の金融政策決定会合や金融政策に関する中銀の要人発言など

景気:景気が良い国の通貨は買われやすく、景気が悪い国の通貨は売られやすい。

⇒景気が良いとは、経済が成長していることを意味します。一般的に経済を測る物差しとしては国内総生産(GDP)が使われ、GDPが前年比や前期比でどのくらい増加したのかにより、経済成長率を数値化します。

経済指標⇒GDP、購買担当者指数(PMI)、個人消費関連(小売売上高等)、雇用統計関連、住宅関連、設備投資関連など

国際収支(貿易収支):貿易の決済には一般的に基軸通貨である米ドルが使われるため、米国以外の国においては、貿易黒字ならドル売り圧力が高くなり、貿易赤字なら赤字分は自国通貨を売りドルを買う必要があるため、ドル買い圧力が高まる。

⇒貿易の決済に着目し為替の需給バランスを計ろうというアプローチです。ただし企業が国外で得た利益(現地通貨や米ドル)の全額を本国に送金するかと言えば、そういう訳ではありません。その後も現地でのビジネスが継続すると考えられ、現地通貨や米ドルでの決済がおこなわれるためです。
なお、このような(特に決算期などにおける)本国への資金還流の事をリパトリエーション(repatriation、略:リパトリ)と言います。

経済指標⇒経常収支、貿易収支、輸入額、輸出額等

通貨供給量(マネーサプライ):流通している通貨の総量のことを言います。通貨供給量が多い国の通貨は売られやすく、少ない国の通貨は買われやすい。

経済指標⇒外貨準備関連、マネーストック関連、マネーサプライ関連

このように、為替相場のファンダメンタル(基礎的要因)に直結する経済指標が多く、マーケット参加者は注目しています。

経済指標の結果と為替相場の動き

為替市場で最も注目される経済指標の1つに「米雇用統計」があります。「米雇用統計」では、全部で10項目の指標が発表されますが、中でもマーケットの注目度が高いのは、次の5項目です。

「非農業部門雇用者数(NFP:NonfarmPayroll:前月比、人)」
「失業率(%)」
「平均時給(前年比、%)」
「平均時給(前月比、%)」
「労働参加率(%)」

さらにその中で最も注目度の高いのは「非農業部門雇用者数(NFP)」になります。普通に考えれば、前月よりも雇用者数が増加していれば米国の労働市場がタイト化(景気が良くなっている)していると言えます。

次のグラフは、米非農業部門雇用者数(前月比)の推移(上段)と、このデータを元に前年末比の推移(下段)を示したものになります。

米雇用統計1
米雇用統計2

2000年初めのITバブルショック、2008年から2009年にかけてのサブプライム問題~リーマンショック、2020年のコロナショックなどで雇用者数が大きく減少する局面はありましたが、その後はそれ以上の雇用回復となっています。

さて、それでは雇用統計におけるNFPが前月より増加していれば、米ドルは買われるのでしょうか?

月次でも年次ベースでも必ずしも増加時にドル高円安になっているわけではありません。統計的な観点でこの期間の相関係数を見ても、月次では0.0278、年次では0.2882で為替相場とNFPに相関があるとは言えません。

ちなみに、雇用者数について特定の水準で景気の良し悪しを分析されるアナリストが一部いらっしゃいます。例えば、リーマンショック後の一時期では前月比15万人増以上が良いというアナリストが数名いました。

また、コロナショック後においては前月比20万人増が分水嶺になっているというアナリストもいるようです。しかし、こういった特定の水準論についても、時期などにより異なるため、あまりアテにならないというのが印象です。

経済指標における市場予想と結果の乖離について

特に注目されている経済指標は、発表前に「市場予想」というものが算出され、公表されています。
「市場予想」はフジトミ証券のホームページ上で確認できます。
経済カレンダー

ところで、この市場予想とは「誰が」予想したものかをご存知ですか?
実は、特定の誰かの予想ではなく、様々な予想を集計したものになります。
具体的には、多くのグローバルな金融機関やそのアナリストのそれぞれ独自の予想について、それらの中央値(平均値ではない)の事を「市場予想」と呼んでいます。

次のイメージは、2023年12月8日のNFPの市場予想で、ブルームバーグ社が集計したものです。

NFP市場予想1

各社の予想は、前月比4.5万人増から27.5万人増までばらけています。
そして、それらを主計した結果、市場予想(の中央値)は、「前月比18.5万人増」になっています。

市場予想の意味合いがわかったところで、次に、予想と結果の乖離について検討する必要があります。
今回の結果はどうだったかというと前月比19.9万人増なので、市場予想よりも良かったという事になります。

それでは次に市場予想に対する結果がマーケット全体に与える影響は、どうでしょうか?

いくつか考えられることがありますが、1つ目の前提としては、市場予想がマーケットに完全に織り込まれていて、市場予想どおりなら価格は変動しないというようなケースです。
この場合は予想よりも結果が強いか弱いかで相場が動くと考えられます。

もう一つの前提は、市場予想はマーケットに“完全には”織り込まれておらず、市場予想どおりなら価格は完全に織り込んだ状態まで変動するというケースです。
この場合、市場予想の織り込み度合いにより相場の動きは読みにくいです。

更に、市場予想は上記のとおり各社の集計です。
仮に各社のばらつき度合いが大きい場合と、各社がほぼ同じような予想をしている場合では、どうでしょうか?

次のグラフは、2023年12月8日(上段)と10月6日(下段)のNFPに対する各社の市場予想を棒グラフで、そのばらつき度合いをベルカーブ(±標準偏差は黄色い縦線)で、結果を黄色いひし形で示したものになります。

NFP市場予想2
NFP市場予想3

12月のNFP市場予想の±標準偏差は約3.6万人、10月は約2.9万人ですから、12月の方が6月よりも市場予想は分散していたということがわかります。
市場予想が分散している程、「予想はできていない(=あてにならない)」、ひいては「予想は市場に織り込まれにくい」とも言えませんか?

ちなみに、それぞれの経済指標発表後、すなわち12月8日22時半からの30分と10月6日21時半からの30分の米ドル円の値動きは、下のグラフのとおりで、前者の4本値は144.38、145.21、143.76、144.19、後者は148.98、149.53、148.97、149.41です。

もちろん、雇用統計発表後の値動きですので、NFP以外の指標、例えば失業率や平均時給などの結果にも影響されていると考えられます。

経済指標の良し悪しが市場にあたえるインパクトを考える

このように、経済指標の結果による値動きは、「前回よりも良くなっているのか、悪くなっているのか」、更に「市場予想に対して良いのか、悪いのか」だけでなく、市場予想がマーケットに織り込まれているのかどうかを把握する上で、「市場予想の分散度合い」も確認する必要があります。

マーケットがフォーカスしている材料

ここまでは、経済指標のマーケットに与える影響自体をお伝えしました。
それでは、それぞれの経済指標自体の重要度は、どうでしょうか?

結論から言うと、時代によって、そのときの情勢によってマーケットが注目している材料が異なります。

例えば、1980年前後であれば、貿易収支の結果などで為替相場が大きく動くことが多かった印象で、金利や物価については、マーケットはそれほど注目していないような印象があります。

しかし今はどうでしょうか?
確かに貿易収支は、為替の実需に与える影響はあるものの、それほど注目度は高くないように思われます。

このように、時代や情勢により、「マーケットがフォーカスしている材料」が異なるという見方が出来そうです。

マーケットがフォーカスしている材料が、景気なのか、金利なのか、物価なのか、国際収支なのかなどにより、各経済指標の重要度合いも変わってくるという事です。

日々の報道などから、マーケットがどの材料にバイアスがかかっているのかを読み取りながら、各経済指標の重要度合いを想像するということが重要に思われます。

こういった観点で経済指標を見ると本来なら買い材料となるはずが、売り材料と認識されるケースなどについても説明できそうです。

例えば、雇用統計の結果が良ければ、素直に考えれば米ドルは買われます。
しかし、マーケットが金利より物価にフォーカスしている場合は、良好な雇用統計がインフレを想起させ米ドル売りに繋がることがあります。

逆にインフレ高進の継続は直接的には米ドル売り材料になりますが、マーケットが金利にフォーカスしている場合に物価上昇が金融引き締め懸念を想起させるようであれば、米ドルは買われやすくなります。

マーケットが景気動向にフォーカスしている場合なら、金融引き締めは直接的には通貨高になりやすいですが、金融引き締めにより株価が大幅に売られ景気悪化懸念により、通貨が売られるということもあります。

更に2国間の政策金利動向に注目されている場合で、一方は、金利据え置き、もう一方が金融引き締め継続で金利水準が高い場合なら、仮にもう一方の国が引締めを終了した場合でも金利差からもう一方の国の通貨の方が買われやすいというのが素直な見方ですが、マーケットの織り込み度合いにも拠っては、金利差がある状況であってももう一方の国の通貨が売られるということがあります。

このように、マーケットが最もフォーカスしている材料が何なのかを、日々のニュースから読み取ることが重要だという事です。

まとめ

ここまで解説したとおり、経済指標の良し悪しで相場が素直に動くかは、そのときどきにより異なります。マーケットが何にフォーカスしているのか、経済指標はどのようなトレンドで推移しているのか、市場予想の分散度はどうか、市場予想に対する結果の乖離はどうかといったことを日々のマーケットニュースや、それまでの経済指標の結果に対する相場の変化から読み取って、臨機応変に対応する必要があるという事です。

相場の雰囲気のことを「場味」などと言います。
相場においては、マーケット全体がどのようなテーマにフォーカスしているのか空気を読むことが重要なのです。

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