FXにおけるチャートの見方とチャート分析の基礎
FX取引はチャート分析が肝?!チャートの見方と分析の基礎
FX取引に限らず、株式市場にせよ債券市場にせよ価格変動を見通すうえで参考材料となるのが、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析。それぞれの分析の特徴については、「▼ファンダメンタルズ要因とテクニカル分析」にて詳しくご紹介しておりますが、今回はチャートを用いたテクニカル分析にフォーカスし、FX取引におけるチャートの見方や売買判断の基本などをご紹介していきます。
まず、ファンダメンタルズ分析においては、各国の経済指標や経済、金融政策動向などの基本要因を背景とした通貨高・通貨安判断となりますので、ある意味明確な根拠に基づいた判断ということが言えます。一方のテクニカル分析は、
価格や取引量に、全ての情報と市場心理などが織り込まれている
というアプローチで、ざっくりと言えば
価格や取引量を分析することが需給や市場心理に繋がり、今後の相場動向を推測できる
というものです。
ここで、最もポピュラーなツールがチャートです。
そもそもチャートとは、価格や出来高などの推移を表したグラフのことです。
テクニカル分析では、その値動きやトレンド(価格の方向性)を判断したうえで、
・今後はこのように動くだろう
・その辺の水準から上値が重くなるだろう
・ここから反転するだろう
といった予想をするために利用します。
チャートには、一般的に使われるローソク足のほか、バーチャートやラインチャートなどがあります。
日本国内で古くから使われ、海外でも利用者が増えているローソク足チャートは、始値や終値、高値・安値などが示され、値上がり時には赤(または白、海外では緑)、値下がり時には青(または黒、海外では赤)で、値動きを示します。
また、価格推移を元に移動平均線などの折れ線グラフや、相場の速度や買われ過ぎ・売られ過ぎを判断するオシレーター、取引量などから人気度合いを判断する出来高など
様々なテクニカル指標を追加して分析できる
のも、チャート分析の特徴のひとつと言えます。
さて、まずはローソク足チャートの基礎から見ていきましょう。
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FX取引におけるローソク足と週足・日足・時間足の時間軸の捉え方
ローソク足チャートにおいては、
・1ヶ月の価格変動を1本のローソクで示す月足
・1週間の価格変動を1本のローソクで示す週足
・1日の価格変動を1本のローソクで示す日足
・1時間の価格変動を1本のローソクで示す1時間足
・5分間の価格変動を1本のローソク足で示す5分足
など足の期間を切り替えて表示できるのが一般的です。
さらに細かく見る場合には、1分足やティックなどのチャートを表示させることができるものもあります。
しかし、チャート分析の基本はトレンド(相場の方向性)の把握
なので、1分足や5分足といった時間軸の短いチャートは、方向感の無い同じ価格帯での値動き(トレンドレス、横ばいトレンド)の期間が多くなり使いにくいかもしれません。なお、こういったトレンドレスの値動きのときは、幾らまで下がったら買う、幾らまで上がったら売る、といったような用途でチャートを用いることが多い傾向にあります。
チャートの時間軸の違いによる基本的な考え方としては
・長い足(月足・週足)で大まかなトレンドを把握する
・短い足(日足1時間足、5分足)で短期的なトレンドを把握する
という用い方が一般的です。
例えば月足で上昇トレンド、日足でも上昇トレンドなら、買い建玉(ロングポジション)を持つのが基本です。
仮に売り建玉(ショートポジション)を持つ場合には、「短期的な値下がり」(反落局面)を狙うことを前提とする必要があります。
よくある失敗例としては、明らかに下降トレンドを形成している通貨ペアに対して
さすがに売られすぎだから、そろそろ反転するだろう
と根拠のない判断から買い建玉(ロングポジション)を持ってしまい、そのままズルズルと値下がりして塩漬けになったり、ロスカットに掛かったりしてしまうケースです。
あなたが、チャートを見て単に「安い」と判断するあなたが、チャートを見て単に「安い」と判断することは、テクニカル分析ではありません。
テクニカル分析は、基本的な分析手法があり、これを理解して利用すれば、
個人的な思惑や感情を排除してくれるツール
になり得ます。
そこで、まず相場のトレンドをどう把握するのかを理解しましょう。
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トレンドとトレンドラインの活用方法
トレンドとは、流行や動向を意味します。金融の世界では、(価格の)方向性を意味し、次の3つの種類があります。
1.上昇トレンド
⇒価格が右肩上がりに推移しており、明示的な安値と安値、高値と高値が切り上がっている状況(特に重要なのは安値が切り上がっていること)
2.下降トレンド
⇒価格が右肩下がりに推移しており、明示的な高値と高値、安値と安値が切り下がっている状況(特に重要なのは高値が切り下がっていること)
3.トレンドレス(横ばいトレンド)
⇒上昇トレンドでも下降トレンドでもない状況
トレンドを確認したら、チャート上でトレンドラインを引きます。こうすることで
視覚的に相場のトレンドとその変化を捉えることができます。
トレンドラインの引き方はとても簡単です。
相場が上昇基調であれば、ローソク足の明示的な安値同士を直線で結ぶだけ。
下降基調であればローソク足の明示的な高値同士を直線で結ぶだけ。
その際、最安値や最高値を起点にしなくても構いません。複数の安値や、複数の高値に接するトレンドラインを引きます。(※注:最安値、最高値を起点とする方法もあります。)
【上昇トレンドライン】
【下降トレンドライン】
また、
上昇トレンドラインをサポートライン
下落トレンドラインをレジスタンスライン
とも言います。
上昇相場における上昇トレンドラインは相場を下支え(サポート)に、下降相場における下降トレンドラインは相場の抵抗(レジスタンス)になっているように見えるからです。
トレンドラインが引けたら、次は使い方です。
使い方は至ってシンプル。売買サインは、次の通りです。
上昇トレンド時:基本は買い 上昇トレンドを下回ったら売り
下降トレンド時:基本は売り 下降トレンドを上回ったら買い
簡単ですよね?
この基本形の売買サインは、建玉(ポジション)を持つときだけでなく建玉(ポジション)を決済する際にも利用します。
例えば、上昇トレンド時に買い建玉(ポジション)を持ち、上昇トレンドラインを下回った為、決済するというケースです。
もちろん決済して利益確定となる場合だけではなく、損失となる場合もあります。
これを損切りといいます。
損切りは極力したくないというのが本音ですが、相場が上昇トレンドから下降トレンドに変化したのであれば、早めに損切りをおこない、次の取引に移る方が得策だと考えられます。
このようにチャートを利用して売買サイン通りに取引をした場合、勝率100%ということはありません。
もしかしたら、ニュースなどから勘ピュータ(投資家自身の感覚)で分析して売買した方が、勝率自体は高いかもしれません。
実際に過去の調査では、個人投資家の「勝率」は、6割から8割程度となることが多かったです 。では、勝率が高いこと=利益になっているかというとそうではありません。
多くの個人投資家は、利益が少し出始めると利益確定し、損失が大きくなりどうしようもなくなると損切りをおこなうという傾向があります。
相場の格言には次のようなものがあります。
“損小利大“
“損切は早く、利は伸ばせ”
また、米国で伝説の相場師と言われるウィリアム・ギャンの価値ある28のルールの15番目に、次のようなものがあります。
Avoid taking small profits and big losses
(小さな儲けと大きな損は回避しろ)
これらは全て、利益確定が早く、損切りは先延ばしする人間心理を戒めるものです。
この『利小損大』になるような人間の意思決定や心理については、2002年にノーベル経済学賞を受賞したプロスペクト理論(行動経済学)として、広く知られています。(が、実際投資をはじめると、心理的に利益確定は早すぎて、素早い損切りは心理的にできないんですよね。。。。)
それでは、トレンドラインを利用した売買の場合はどうでしょう?
トレンドラインでの検証はできません。
なぜなら、トレンドラインは個々の投資家が思い思いのラインを引くため、正しい検証はできないんです。
でも、移動平均線というものを疑似トレンドラインとして利用し、株や為替など売買の検証をおこなうことができます。
ちなみに、過去の検証結果では、個人投資家よりも良い運用結果が得られました。
ただ、この疑似トレンドラインでの勝率は概ね30%から40%程度と個人投資家のそれよりも悪い結果なのです。
では、どうしてこのような結果かというと、次の2つが理由です。
①トレンドに沿った取引となるため、トレンドが出ている相場の状況で大きな利益となる
②トレンドレス相場では、小さな損切りを繰り返すため勝率が低くなる
以下は、チャートなどを利用したテクニカル分析をおこなう上での3つの前提です。
1.相場はトレンドを形成する
2.価格や出来高に市場心理や材料が全て織り込まれている
3.歴史は繰り返す
トレンドラインなどを利用して相場分析をするということは、トレンドの変化を見極めて、トレンドに沿った売買をおこなうということです。そのため、相場に大きなトレンドが生じると大きな利益につながるということです。
アメリカのウォール街の格言に、“The trend is your friend.”(トレンドは友達)というものがあります。
また、先ほどのギャンのルールの5番目には、“Do not buck the trend. Never buy or sell if you are not sure of the trend according to your charts and rules.”(トレンドに逆らうな 自分自身のチャートとルールに従い、もしトレンドに確信が持てないなら、決して売っても買ってもいけない)とあります。
是非、皆さんも相場のトレンドを見極めて、トレンドに沿った取引をおこなってください。
※なお、フジトミ証券ではトレンドを自動的に判定し、売買サインを表示するツールなども提供しています。
くわしくはこちら⇒F未来予想チャート
最後に、もう1つ売買する価格のポイントについてお伝えします。それは、
一定の価格水準が相場の転換点の目途になる
です。
具体的には、どういった価格かというと、次の2つ(3つ)です。
明示的な高値(安値)と節目の価格
具体的には、次のイメージ図のようにある価格が明示的な高値だったとします。しかも切りの良い節目の価格(28,003円とかではなく、28,000円などのような価格)であれば尚更です。
このような価格が相場の転換点になる理由は市場参加者の心理によります。
例えば、ここで示したイメージ図の場合、最初の明示的な高値が意識され、「ここまで上がったら売ろう」とする人が多くなります。そのため、その後、跳ね返される結果となっています。
しかし、3回目の局面では、売ろうとする圧力に勝る買い注文によって、この水準を上回っています。
この時、この水準で売り建玉(売りポジション)を持ってしまう人も多くいるので、ここから上昇するとそういった人たちは損失が膨らむという事になります。
仮に価格がその後、下落したとしても次のイメージ図のように、これまで高値として意識されていた水準が逆に価格を下支えする水準になってしまうんです。
わかりやすく言えば、赤の2重丸で売っていた人が青丸の水準まで下落すると、評価損失が目減りし決済(買戻し)をしようとするため、この水準で価格が押し戻されるという事です。
これを、
抵抗線と支持線の逆転(Role Reversal=役割の転換)
といいます。
まとめ
ここまでお伝えしたとおり、チャートなどを利用したテクニカル分析は、相場のトレンドを把握し、価格の動きから市場参加者の心理を伺い分析する手法です。
テクニカル分析の最大のメリットの1つは、どの水準、どのタイミングで売買するのかを教えてくれることにあります。
そして、それは危険を察知する“炭鉱のカナリヤ”として利用できるという事です。
是非、売買をする際には、トレンドラインを引いて相場のトレンドを把握しておきましょう。
また、明示的な高値(安値)には、注目しておきましょう。
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※2022年8月時点での情報となります。