消費者物価指数(CPI)と家計支出の違い(その2)
2022年10月20日
皆さま、おはようございます。CFP(ファイナンシャルプランナー)のワイワイこと岩井です。
昨日に引き続き、消費者物価指数(CPI)と家計支出の違いについて深堀りしてみたいと思います。前回の記事では、日本の消費者物価指数(CPI)はラスパイレス型物価指数という方法で計算しており、その計算に今年の消費数量が含まれていないことを確認しました。詳しくは、前回の記事「消費者物価指数(CPI)と家計支出の違い(その1)」をご覧ください。
今回は、実際の家計支出がどう変化しているかをみていきたいと思います。
次のグラフは1ヶ月間の消費支出と前年同月比をグラフにしたものです。
グラフ1. 二人以上世帯の消費支出
出典:総務省統計局
グラフ1をみると日本の平均的な家庭は毎月25万円から30万円程度のお金を消費していることがわかります。傾向として12月、3月、4月の消費額が多く、2月と6月は消費額が少ないようです。どうしてそのようなバラツキが生じるのか。3月、4月は引っ越しや新生活が始まる時期であり、2月は日数が少ないことが影響していそうですね。12月に関しては収入が大きく関係しています。
グラフ2. 二人以上世帯の実収入と消費支出
出典:総務省統計局
青のグラフは可処分所得(収入から社会保険料や税金を差し引いたもの)、赤のグラフは消費支出を表しています。
グラフをみると消費支出と比べて可処分所得の金額にはバラツキがあることにお気づきでしょうか。これはボーナス(賞与)の支給によるものです。日本のボーナスは夏が6月下旬から7月上旬にかけて、冬のボーナスが12月中旬ごろに支給されることが多いですよね。12月と6月の所得が増加しているのは、ボーナス(賞与)によるものです。ものすごく伸びていますね。
では、収入が増えると消費支出が増えるのか。
もう一度、「グラフ1」をみると12月の支出は増加していますが、6月の支出は、年間を通じて少ないことがわかります。これは冬のボーナスは大きな買い物に使われましたが、夏のボーナスはそれほど大きな買い物に使われなかったことを表しています。また、冬のボーナスによって50から60万円程所得が増加しても消費される金額の増加は5万円程度だったことも確認できます。なぜボーナスが入ってもそれほど消費が増えないのか。それは、一般的な日本の家庭では、得た所得すべてを消費に回すような生活を送っていないからです。日本の平均消費性向(消費支出を可処分所得で除したもの)は、68.4なので、100の内31.6は消費されることなく貯蓄・投資に回されています。本当に欲しいものがあるのであれば、毎月の余剰から購入することができる訳ですね。
現代の日本人は、衝動的に買い物をするなんてことは無く、必要なものに必要な金額を支払う健全な生活をおくっている人が多いようです。
話を元に戻します。
グラフ1.消費支出と前年同月比(名目)に表示している緑の面グラフは消費支出が前年同月比でどう変化したのかを表したものです。直近の6月、7月、8月の変化は6.4%増、6.6%増、8.8%増と3ヶ月連続して増加しています。8月の増加額は23,336円です。かなり増えましたね。
消費者物価指数(CPI)と比べてみましょう。
表1.消費者物価指数と消費支出(前年比)
2022年6月 | 2022年7月 | 2022年8月 | |
消費者物価指数 | 2.4 | 2.6 | 3.0 |
消費支出 | 6.4 | 6.6 | 8.8 |
出典:総務省統計局
消費者物価指数(CPI)の前年比と消費支出の前年比との間にはとても大きなギャップが生まれています。昨日確認したとおり、消費物価指数は今年の消費数量が計算に組み込まれていないので実際の消費額がいくらだったのかを計算することができません。消費者物価指数(CPI)の数字以上に実体経済は疲弊しているのかもしれませんね。
次回、「消費者物価指数(CPI)と家計支出の違い(その3)-食費とエンゲル係数」につづく・・・。
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・家計調査(家計収支編)