消費者物価指数(CPI)と家計支出の違い(その3)-食費とエンゲル係数
2022年10月25日
皆さま、おはようございます。CFP(ファイナンシャルプランナー)のワイワイこと岩井です。
2回に渡って消費者物価指数(CPI)と家計支出の違いについてお届けしました。
バックナンバーはこちらをご覧ください。
簡単に前回までのおさらいをすると消費者物価指数は価格変動に注目する指標で基準年の消費数量に固定したラスパイレス型で計算しています。そのため、実際に家計がどれだけのお金を使用したのかを示す家計支出とは、数字にズレが生じます。私達は、価格に応じて購入する数量を調整しながら生活していますので、どちらかと言えば家計支出の方がよりリアルな数字だと言えます。
今回は家計支出のデータを使ってどんな品目の消費額が伸びているのか深堀りしてみたいと思います。一般家庭ではどんなことにお金を使っているのか。それを示したのが次のデータです。
グラフ1.二人以上世帯の支出
出典:総務省統計局
表1.二人以上世帯の支出
食費 | 住居 | 水道光熱費 | 家具家事用品 | 衣類 | 保険医療 | 交通通信 | 教育 | 教養娯楽 | その他消費 |
85,949 | 18,059 | 21,341 | 13,010 | 7,218 | 15,696 | 42,384 | 7,997 | 30,826 | 47,495 |
出典:総務省統計局
家計の中で最も出費が多いのが食費です。1ヶ月間で85,949円(30%)を使っています。中学生の家庭科の授業でエンゲル係数を習ったのを覚えていますか?エンゲル係数とは、「食費÷総消費支出」で計算される係数で、その国の経済成長を示す指標のひとつです。グラフ1が示すとおり。、日本の標準的な家庭のエンゲル係数は30%でした。
ちょっと古いデータですが、次のグラフは日本のエンゲル係数の推移をまとめたものです。
グラフ2.エンゲル係数の推移
出典:総務省統計局
第二次世界大戦直後、日本のエンゲル係数はとても高い数値でしたが、戦後の経済成長の結果、1970年代後半には30%を下回り、2000年以降は、25%を下回る低水準で落ち着いていました。
過去のエンゲル係数と比較すると現在30%という結果がとても高いことがわかりますね。
家計支出における食料代の変化とエンゲル係数にだけ着目すると次のような結果になりました。
グラフ3.食費とエンゲル係数
出典:総務省統計局
赤い折れ線グラフがエンゲル係数、青い棒グラフが食費です。2020年8月以降の平均は28%でした。グラフ2で確認した戦後のエンゲル係数と比較して、ここ最近の値は、上昇してきています。現在の水準は40年前とあまり変わらない消費状況です。
色々な原因が考えられますが、日本の場合、コロナと高齢化の影響が大きいとして考えられます。コロナ以降、テレワークが導入されるなど、以前と比べて人と接する機会が大きく減りました。人と会わないのであれば衣類を購入する必要性も下がってしまいます。また、高齢になると必要最小限のもの以外購入しなくなる傾向があるため、他の出費が減少する中、食費だけがそれほど下がらなかったためエンゲル係数が高まってしまったのではないでしょうか。
「食料以外は、本当に必要とされるもの以外売れない。」日本は、そんな世の中になっているのかもしれません。投資家は、どんな産業に投資すべきなのか。考えさせられるデータですね。
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・総務省統計局