金価格の変動要因と現状
2024年10月07日
過去最高値を更新する金(Gold)
「リスクオフ(リスク回避)」とは、金融用語でより安全な資産に資金が向かい易いマーケットの状況をいいます。
例えば、株式投資の資金を引き揚げて(株価が下落)、国債を買うような投資行動などが挙げられます。
リスクオフで買われやすい資産の1つに「金(Gold)」があります。ただ、新型コロナウィルスによる景気後退懸念によるリスクオフでは、一時全ての資産を現金化する動きがあったため、リスクオフで買われやすいとされる金でさえも下落する局面がありました。
金価格は、市場の需要と供給の影響を受けて変動し、時には歴史的な高値を記録することがあります。金の価格上昇は、様々な要因によって引き起こされる可能性がありますが、一般的には経済の不安定さやインフレーションの懸念、または政治的な不確実性などが影響しています。過去最高値を更新している金価格は、投資家や取引業者にとって注目の的となっています。
以下、現時点(2024年10月7日時点)の金価格に影響を与えている変動要因をお伝えします。
主要中央銀行の政策金利
2022年のロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇をきっかけに、世界的なインフレ(物価上昇)となりました。このインフレを抑制するために、米国をはじめとする主要中央銀行は政策金利の引き上げを開始しました。この主要中央銀行の利上げによって金利のつかない金にとってマイナス要因となりますが、その一方でインフレによる商品価値の上昇がフォローとなり、主要中央銀行が利上げを継続する中、金価格も上昇していきました。
しかし、現在インフレは鈍化傾向に進んできていますので、主要中央銀行は政策金利の引き下げに舵を取る動きとなっています。米国は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で4年半ぶりに利下げを実施しました。また、ECB(欧州中央銀行)は、米国より先に2024年6月の会合から利下げを開始しています。
主要中央銀行の利下げは、金の支援材料となりますが、インフレの鈍化による商品価値の低下は圧迫要因となります。
地政学的リスク
現在、中東地域では長引くイスラエルとパレスチナ自治区のイスラム組織ハマスとの紛争の他に、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの衝突が激化しています。また、ヒズボラの後ろ盾となっているイランが、先日イスラエルにミサイルを発射したことで、イスラエルとイランの直接的な衝突が警戒されています。
また、ロシアとウクライナの軍事衝突は2年以上続いており、各地での紛争による地政学的リスクから、安全資産の役割となる金が買われる動きとなっています。
中央銀行の買い付け
2022年から2023年の中央銀行による金の買い付けが2年連続で1000トン超えとなっています。中央銀行による金の買い付けによって外貨準備に占める金の比率を高めていることになります。これは、世界的な経済情勢や地政学的リスクを警戒した基軸通貨となるドル離れによるものとなっています。
ワールド・ゴールド・カウンシルによる統計データによると、2023年度で特に購買意欲が強かった国は中国(225トン)、ポーランド(130トン)、シンガポール(77トン)・リビア(30トン)となっています。
【金(標準)先物とNY金先物の推移】
現在、NYダウや日経平均株価は史上最高値を更新しています。2019年末を100とした指数化したグラフで金標準と主要金融指標を見比べます、NYダウや日経平均よりも上昇基調は強い状況となっています。これだけ、金標準が金融資産の中で資金が集まっている状況となっています。
(2020年1月~2024年9月30日)
出所:Bloombergのデータを元にフジトミ証券作成
【金(標準)先物と主要金融指標の推移】
現在、NYダウや日経平均株価は史上最高値を更新しています。2019年末を100とした指数化したグラフで金標準と主要金融指標を見比べます、NYダウや日経平均よりも上昇基調は強い状況となっています。これだけ、金標準が金融資産の中で資金が集まっている状況となっています。
(2020年1月~2024年9月30日)
出所:Bloombergのデータを元にフジトミ証券作成
コロナショック後の金価格は、他の金融指標に比べて堅調に推移しています。
上のグラフは、金(標準)先物と、日経225、NYダウ、独DAX®、英FTSE100の2020年年初来のチャートです。
主要国の株価指数も一部を除いては、世界的な金融緩和や新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いていることもあり、最高値を更新しています。
一方で、金価格は米利下げ観測や地政学リスクの継続などを背景に過去最高値を更新しています。
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