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原油とガソリン・灯油のクラック・スプレッド

2022年06月21日

皆さん、おはようございます。CFP(ファイナンシャルプランナー)のワイワイこと岩井です。

この記事は2018年2月16日に公開したものを2022年6月21日にリライトしたものです。

今回は、クラック・スプレッドについてのお話です。

クラック・スプレッドって聞いたことありますか?
クラックとは、原油を石油製品に精製する過程のことです。

ガソリンや灯油といった石油製品は原油から精製されますが、その精製にはコストが掛かります。どのくらいのコストが掛かるのか。それを原油価格と石油製品価格の差で示したものがクラック・スプレッドです。

2022年6月13日、資源エネルギー庁より発表されたガソリンと灯油の全国小売り価格は、それぞれ1リットルあたりガソリンが171円、灯油が113円でした。
ガソリンには1リットルあたり53.8円のガソリン税と2.8円の石油炭素税が徴収されていますので消費税を除いた本体価格は98.85円です。
灯油には1リットルあたり2.8円の石油炭素税が徴収されており、消費税を除いた本体価格は99.93円です。

因みに2022年6月13日のドバイ原油先物価格(2022年6月限)の価格は1キロリットルあたり97,200円だったので、1リットルあたりでは97.2円でした。

3つの価格を比べるとご覧のようになりました。

ガソリン、灯油、原油の原価(2022年6月13日)

ガソリン・・・・98.85円/リットル
灯油  ・・・・99.93円/リットル
原油  ・・・・97.20円/リットル

ガソリンと原油の価格差は、1.65円
灯油と原油の価格差は、2.73円
価格差でみればほんの僅かです。

石油会社は、中東などの産油国から原油を輸入し、製油所に運ばれてきた原油は加熱炉と常圧蒸留装置でガソリン・灯油・軽油などの製品に加工する訳ですが、この差額だけを見るとクラック・スプレッドはほとんどなく、石油会社のマージンがほとんどないことになってしまいます。

そんなことってあるのでしょうか???

現在のクラック・スプレッドがほんの僅かなのは、今年の1月から始まった「燃料油価格激変緩和補助金」が大きく関係しています。
この補助金制度は、ガソリン価格が1リットル170円以上なった場合、1リットルあたり5円を上限に燃料油元売りに補助金を支給するというものでしたが、その金額は徐々に拡充され、令和4年4月25日週からは上限35円に拡充され、更なる超過分についても2分の1が支援されることになっています。

つまり、現在私達が購入しているガソリンや灯油の価格は、補助金によって引き下げられた後の価格ということです。

それが解るのが次のグラフです。

レギュラーガソリン・全国平均価格

出所:資源エネルギー庁

6月13日時点でガソリン小売価格は171.2円/リットルでしたが、実際の価格は210.6円/リットルで39.4円も抑制されています。補助後のガソリン価格は170円前後で推移していますが、補助がない場合のガソリン価格はすでに200円を超えてしまっています。

灯油・全国平均価格

出所:資源エネルギー庁

灯油に関しても6月13日時点の小売価格は112.9円/リットルですが、実際の価格は152.9円/リットルで40円抑制されています。

補助金によって抑制される前の価格からガソリン税・石油炭素税を差し引いた金額でクラック・スプレッドを計算してみました。

2022年6月13日(補助金なし)

ガソリン・・・・134.85円/リットル
灯油  ・・・・136.2円/リットル
原油  ・・・・97.20円/リットル

ガソリンと原油の価格差は37.65円、灯油と原油の価格差は39.0円です。

補助金の価格抑制を除外して考えれば、1キロリットルあたり97.20円仕入れてきた原油を精製して、ガソリンは134.85円、灯油は136.2円で販売していることになります。

ガソリンは37.65円、灯油は39.00円のマージンが発生している訳ですが、現在のクラック・スプレッドは高いのでしょうか。それとも安いのでしょうか。

次のグラフは、2002年から2018年のクラック・スプレッドです。

灯油と原油
clackspred_h_p

チャートは上から灯油先物価格、原油先限価格、そして灯油と原油のクラック・スプレッドです。

灯油のクラック・スプレッドは1万円台/キロリットルで推移することが多いようです。

続いてガソリンと原油のクラック・スプレッドです。

ガソリンと原油
clackspred_g_p

ガソリンに関しても1万円台/キロリットルで推移することが多いようです。

先物市場の取引単位は1キロリットル(1000リットル)なので、1リットルあたりのクラック・スプレッドは10円から19円程度でしたが、現在のクラック・スプレッドは、ガソリンが37.65円灯油が39.00円ととても高額になっていました。

ちなみに皆さんは補助金によって価格抑制される前のグラフを見たことがありましたか?

価格抑制される前のグラフって、あまり報道されていませんね。

現在のガソリン小売価格は、補助金によって価格抑制されているため一般消費者である私達には今までとあまり変わっていないように思えてしまいますが、実際には大きく変動している訳です。
また、クラック・スプレッドは普段よりも広めになっていますので、石油元売り業者が得るマージンはいつもより多めになっていると推察できます。

この補助金は、私達の税金から賄われていますので、間接的には自分たちで補助金負担していると考えることもできます。原油価格の高止まりが続いていますが、このままクラップ・スプレッドが広い状態が続き補助金が使われ続けた時、財源が持つのか不安になってきますね。
現在の国内原油市場がどうなっているのか。
国内原油価格の動向について詳しく知りたい方は、フジトミ証券のFITSをご利用ください。

今日はクラック・スプレッドについてのお話でした。

このコメントは編集者の個人的な見解であり、内容を保証するものではありません。また、売買を推奨するものでもありません。ご了承ください。


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