
1. はじめに:RCIとは何か?
RCI(Rank Correlation Index/順位相関指数)とは、一定期間における「日付(時間)の順位」と「価格の順位」の相関係数をもとに算出されるオシレーター系のテクニカル指標です。価格の短期的な「方向性」や「過熱感」を視覚的に把握するために用いられます。
【くりっく株365 NYダウの日足とRCI】

一般的なオシレーター系指標であるRSIやストキャスティクスなどとは異なり、価格そのものの変化ではなく価格と時間の「順位」に注目して計算される点が大きな特徴です。
2. RCIの仕組みと定義
RCIは、価格と日付(時間)の相関関係を調べることで、相場のトレンドと過熱感(買われ過ぎや売られ過ぎ)を把握しようとします。
RCIの値の範囲は –100〜+100です。
・完全な上昇トレンド:RCIは+100付近で推移
・完全な下降トレンド:RCIは–100付近で推移
・横ばいトレンド/トレンドレス:0付近で推移
つまり、価格が日々上がっていれば+100に近づき、逆に日々下がっていれば–100に近づきます。したがって、RCIの方向性が相場の短期的なトレンドを示すことになるわけです。
※「短期的な」というのは、RCIの計算期間が9などの比較的短期の期間であるためです。
また、RSIやストキャスティクス同様、+100に近いほど買われ過ぎ、-100に近いほど売られ過ぎとも読み取ることができ、戻り売りや押し目買いのタイミングを計るツールとしても利用されます。
3. 計算式と具体例
RCIの計算式は、以下の通りです。
RCI = (1 – (6×d)/(n³–n)) × 100
・n=対象期間(日数)
・d=各日の「日付順位」と「価格順位」の差の2乗和
この式は、統計学における「スピアマンの順位相関係数」をベースとしています。具体的には、日付の古い順に順位を1、2、3…と付け、価格についても安い順に順位を付けていきます。以下に例として5日間の価格推移でRCIを算出してみました。
【時間毎に価格が上昇しているケース】

日付の順位と終値の順位を算出し、その差を求めて二乗し全てを合計すると0となります。
RCI = (1 – (6×0)/(5³–5)) × 100 = ( 1 – 0 ) × 100 =100
RCIは100になります。
【時間毎に価格が下落しているケース】

日付の順位と終値の順位を算出し、その差を求めて二乗し全てを合計すると40となります。
RCI = (1 – (6×40)/(5³–5)) × 100 = ( 1 – 2 ) × 100 = –100
RCIは–100になります。
このように、RCIが+100なら毎日高値を更新していることを、RCIが-100なら毎日安値を更新していることを意味し、0より上で100に近いほど上昇トレンド、0より下で-100に近いほど下降トレンドと読み取れます。
※ただし、このトレンドは算出期間に基づく短期的なトレンドであることには注意が必要です。
更に、これを時系列で計算することで、RCIが0より上で上昇していれば相場の上昇傾向が強いことを、RCIが0より下で下降していれば相場の下降傾向が強いことを、意味します。
また、RCIが100に近い水準から下降基調なら相場は下降トレンドに、RCIが-100に近い水準から上昇基調なら相場は上昇トレンドに変化しつつある可能性が高いとも読み取れます。
3-1. 相関係数とは
相関係数( ρ )とは、2つのデータ(数の集まり)の数値的な関係の強さや向きを表したもので、 −1 ≤ ρ ≤ 1 の範囲をとります。
・ ρ = 1 :完全な正の相関
・ 0.80 ≤ ρ ≤ 0.99 :非常に強い正の相関
・ 0.60 ≤ ρ ≤ 0.79 :強い正の相関
・ 0.40 ≤ ρ ≤ 0.59 :中程度の正の相関
・ 0.20 ≤ ρ ≤ 0.39 :弱い正の相関
・ 0.01 ≤ ρ ≤ 0.19 :ほぼ無相関
・ ρ = 0 :完全な無相関
・ -0.19 ≤ ρ ≤ -0.01 :ほぼ無相関
・ -0.39 ≤ ρ ≤ -0.20 :弱い負の相関
・ -0.59 ≤ ρ ≤ -0.40 :中程度の負の相関
・ -0.79 ≤ ρ ≤ -0.60 :強い負の相関
・ -0.99 ≤ ρ ≤ -0.80 :非常に強い負の相関
・ ρ = -1 :完全な負の相関
RCIで採用されている相関係数( ρ )は、統計学における「スピアマンの順位相関係数」で、チャート上の指標としてわかりやすいよう100倍した値で表示(100倍して%で表示)されています。
また、相関係数には「スピアマンの順位相関係数」以外に、「ピアソンの相関係数(Pearson’s correlation coefficient)」や「ケンドールの順位相関係数(Kendall’s Tau)」というものもあります。
一般的に相関係数という場合は、「ピアソンの相関係数」を指します。
ピアソンの相関係数は、マイクロソフト社の表計算ソフト「Microsoft Excel」のCORREL関数(あるいはPEARSON関数)で計算することができ、金融業界でも2つの金融指標の相関関係を把握する際などで良く利用されています。
【米ドル/円とユーロ/円相場と30営業日の相関係数】

※上記のグラフは、米ドル円とユーロ円の日足とその30日間の相関関係の推移を示したものです。米ドル円とユーロ円は、基本的に相関が強い傾向(+0.6~+1.0の間で推移することが多い)がありますが、ユーロ圏発の材料が発表される場合など相関が弱くなることや逆相関になることがあります。
3-1-1. 相関係数と因果関係
相関係数が高いか低いかは、あくまでも似ているのか、似ていないのかを把握するものであって、2つのデータに強い正の相関、あるいは強い負の相関があっても、それらに因果関係があるかどうかは別の話です。
例えば、ある国民の身長のデータと体重の膨大なデータがあった場合、これらは正の相関になりやすく、因果関係もありそうです。しかし、次の2つの折れ線グラフはどうでしょう。
【NYダウと豪ドル/円相場の推移 日足】

2本のチャートは、NYダウと豪ドル円の2025年1月から2025年10月6日までの日足チャートです。
どちらも似たような値動きになっており、この期間の相関係数は0.84ですので、非常に強い正の相関があると言えます。しかし、これら2つの値動きに因果関係(関係し合っているかどうか)があるかは、これだけではわかりません。
参考に、その前年である2024年1月から2024年10月7日までの両者の相関係数は-0.01です。今年は、たまたま同じ材料がドライバーとなり、似たような値動きになったのかもしれませんが、相関関係があることがすなわち因果関係にあるとは言い切れない点に注意しましょう。
4. RCIの売買シグナルの読み方
RCIは、主に以下の方法で売買の判断に使われます。
4-1. 単体シグナル
RCIのパラメータは、日足で9日(あるいは10日※)を利用することが多いですが、金融市場や銘柄ごとに調整することをお勧めします。
※パラメータの期間10日は、『日本テクニカル分析大全』(日経新聞出版社)より
【くりっく株365 NYダウ日足とRCIの売買サインのイメージ】

・RCIが0%をクロス
⇒0%を上回ったら買い
⇒0%を下回ったら売り
・RCIが(0%より上側で)上昇:相場は上昇トレンド
⇒買い継続
・RCIが(0%より下側で)下落:相場は下降トレンド
⇒売り継続
・+80%以上:買われすぎゾーン(戻り売りを準備)
⇒+80%を下回る際に売り検討
・–80%以下:売られすぎゾーン(押し目買いを準備)
⇒-80%を上回る際に買い検討
このように、RCIの売買パターンは、基本的にRCIが上昇基調時に買い、RCIが下降基調時に売りとなります。
したがって、逆張り的に使用する場合は、RCIの反転時(反転後)に売買おこなうことになるわけです。
4-2. RCIを活用したクロス分析
4-2-1. パラメータの異なる2本以上のRCIの利用
RCIは長期、中期、短期の複数期間(例:9日・26日等)を組み合わせて使うことで、トレンドと短期的な過熱感の両方を捉えることができます。
短期RCIが長期RCIを上回る:買いシグナル
短期RCIが長期RCIを下回る:売りシグナル
ただし、各RCIの方向や、RCIが0%より上か下かにより、評価が異なります。
【注意点】
2本のRCIを利用した売買をおこなう場合に、最も注意すべきは、短期RCIの方向性です。
0%より上側で短期RCIが長期RCIをクロスする場合でも、短期RCIが上昇基調なら売りシグナルとはしない
0%より下側で短期RCIが長期RCIをクロスする場合でも、短期RCIが下降基調なら買いシグナルとはしない
4-2-2. RCIとRCIの移動平均を利用
RCIがRCIの移動平均を上回る:買いシグナル
RCIがRCIの移動平均を下回る:売りシグナル
※RCIの度数分布は、中心である0%付近はくぼんで、両端の-100%付近や+100%付近がピークになりやすいという傾向があるため、スロー・ストキャスティクスの%DとSlow%Dのクロスのように、RCIとRCIの移動平均のクロスを売買サインにできるということです。
⇒ ある時系列の数値を移動平均することで、そのトレンドを把握することができ、ある数値と移動平均線のクロスでトレンドの変化を確認できます。(移動平均線とは?本当の見方・使い方を完全解説【株・FX対応】)
5. RCI(順位相関係数)とRSI(相対力指数)との比較
5-1. RCI
計算の対象:順位(価格と日付)
計算の意味合い:短期トレンドとその変化
メリット:トレンドの変化が滑らか 複数のRCI併用が相性良
デメリット:利用するのには慣れが必要
5-2. RSI
計算の対象:価格の変化幅
計算の意味合い:相場、トレンドの速度
メリット:過熱感の判断に使いやすい 横ばい相場では効果薄
デメリット: 強いトレンド相場では効果が薄い
5-3. まとめ
RCIは、RSIよりも滑らかな曲線を描き、短期的なトレンドをより直感的に把握できるという強みがあります。
6. RCIを利用した売買の実践と注意点
・ トレンドフォローと逆張りの両方を判断可能。
・ 複数のRCIを利用する場合、短期RCIの方向性でダマシを回避することが重要です。
・ RCIが上下に張り付いている期間が長ければ長いほど、相場のトレンドが強いと判断できます。
・ 移動平均やRSI、MACDとの併用も視野に入れるとよいでしょう。
⇒RCIの方向性やその変化を探るのがポイント
7. まとめ
RCIは、そのユニークな順位相関のアプローチによって、他のオシレーター系指標とは異なる角度から相場を捉えることができます。
国内のトレードツールでは、
・ 相場の“トレンド”や“過熱感”を視覚化
・ 複数期間の組み合わせでトレンドと逆張りを同時に判断
・ 他のオシレーター系指標との違いを意識して、使い分けるのがポイント
テクニカル分析をより立体的にするために、RCIを武器の一つとして取り入れてみてはいかがでしょうか?
【フジトミ証券のトレードツールならRCI(順位相関係数)も利用可能】
※パラメータだけでなく、ラインの色や太さも変更可能です。






