
1. DMI(Directional Movement Index)とは?
DMI(方向性指数)は、相場における**「トレンドの方向性」**を数値的に捉えるテクニカル指標で、J. Welles Wilder Jr.が開発したツールのひとつです。
相場が上昇トレンドなのか、下降トレンドなのか、それともトレンドが存在しないのかを見極めるために活用され、順張り(トレンドフォロー)戦略における重要な判断材料となります。
DMIの構成するラインには、+DIと−DI、ADX(ツールによってはADX-Rも描画可能)など、通常3~4本のラインが含まれますが、トレンドの“強さ”を数値で判断できる指標「ADX」(とADX-R)については、今回の解説記事では省略し、+DIと−DIに焦点を絞って解説致します。
2. DMIを構成する2つのライン:+DIと−DI

・+DI(プラスDI):価格の上昇の勢いを示す指標
・−DI(マイナスDI):価格の下降の勢いを示す指標
これらは、相場が前日比でどれだけ「上方向」または「下方向」に値幅が出たかを基にして計算されます。以下に、+DIと−DIの計算方法を解説し、その意味合いを深掘りしていきます。
2-1. 前提:トゥルーレンジ(True Range, TR)の計算
まず、ボラティリティ(変動幅)を測るための「True Range(TR)=”真の値幅”とも呼ばれます)」を求めます。これは以下①②③の3つの値のうち最大のものを採用します。

TR = Max[①,②,③]
① 当日高値 − 当日安値
② 当日高値 − 前日終値
③ 前日終値 − 当日安値
この計算式によって、前日の終値から今日の高安を含めた「1日の実質的な変動幅=True Range」を正確に把握できます。
2-2. +DI、−DIの計算ステップ
ステップ①:Directional Movement(DM)の計算
・PDM(+DM) = 当日高値 − 前日高値(※前日より高ければ値を取り、そうでなければ0)
・MDM(−DM) = 前日安値 − 当日安値(※前日より安ければ値を取り、そうでなければ0)
※ただし、+DMと−DMが同時に発生した場合、値幅の大きい方のみを採用

PDMとMDMは、「前日よりどれだけ高く(安く)なったか」という純粋な上昇力・下降力を測る指標です。
ステップ②:Directional Index(DI)の計算
・+DI = 100 ×(n日間の+DMの合計 ÷ n日間のTRの合計)
⇒n日間の「相場上昇の強さ」を、その期間の真の値幅に対して比率で表している
・−DI = 100 ×(n日間の−DMの合計 ÷ n日間のTRの合計)
⇒n日間の「相場下落の強さ」を、その期間の真の値幅に対して比率で表している
2-3. 計算式の意味を深掘り
2-3-1. +DI・−DIは「買い手と売り手のエネルギー量」を測っている
DMIの計算式は、一見すると単なる高値・安値の変化を追っているように見えますが、実際には、+DIと−DIをそれぞれ数値化して比較し「どちらの勢力が主導権を握っているか」を定量的に判断するためのツールです。
・+DI > −DI :前日の高値を超えるような動きが目立つ ⇒ 買い圧力の方が売り圧力よりも大きい
・+DI < −DI :前日の安値を下回るような動きが目立つ ⇒ 売り圧力の方が買い圧力よりも大きい
2-3-2. 「方向性」を重視しTrue Range(真の値幅) で「勢い」と「信頼性」を補正
DMIでは単に「今日の高値・安値」ではなく、前日との比較によるTrue Rangeを利用して価格がどれだけ一方向に動いたかを評価しています。
前日終値を含めた当日の終値までの高値と安値によって算出することで、相場における継続性のあるトレンド(=勢いのある片方向の動き)に着目していることを意味します。また、True Rangeを分母に使うことで、「方向性の強さ」に足元の値動きに合わせた現実的なスケーリングをかけています。
例えば、ある銘柄について、「1日平均100円程度の値動きに対し10円の買い圧力」と、「1日平均10円程度の値動きに対して10円の買い圧力」では、その意味合いが全く異なります。
True Rangeを利用してスケーリングの補正をおこなうことで、直感的なダマシを減らし、実質的な売買の圧力を可視化している訳です。
また、こうした指数化により、2銘柄以上の比較もおこなえるという利点もあります。
2-3-3. 値幅と比率による比較
少し脱線しますが、2024年8月2日(金)の植田日銀ショックを覚えていらっしゃる方も多いと思います。日銀金融政策決定会合で予想外の政策金利引き上げがきっかけで、この日の日経平均株価は、終値で前日比マイナス2,216円63銭となりました。
これを受けてマスメディアを中心に「史上2番目の下げ幅」と報じた訳です。
こうした報道とその夜の弱い米経済指標なども重なった結果、週明け2024年8月5日(月)の日本の株式市場は朝から投げ売り状態になり、一時は前日比マイナス4,753円58銭の下落を記録。終値では前日比マイナス4,451円28銭の下落となってしまいました。
8月5日の下落は、8月2日の報道の仕方が投資家を煽ったと個人的には考えています。
「史上2番目の下げ幅」はその通りですが、変動率では「史上25番目の下げ率」でした。
1,000円のものが500円値下がりするのと、10,000円のものが500円値下がりするのとでは、下落幅の重みや意味合いも全く異なります。
メディアは、視聴率やPVなどの数字を意識してインパクトのある見出しを打つことが多いため、投資家としては、変動率などにも着目し、物事を冷静且つ俯瞰的に見ることが大切です。
このような観点で、時系列の数値データは、比率で把握することが大切だと考えます。
3. DMIの見方と売買サインの読み解き方
3-1. 基本的な売買サイン

・+DIが−DIを上回る⇒上昇トレンド⇒買いシグナル
・−DIが+DIを上回る⇒下降トレンド⇒売りシグナル
このクロス(交差)がもっとも基本的な売買サインです。
3-2. ラインの乖離幅にも注目
+DIと−DIの距離(乖離)が大きいほど、売り買いの圧力差の違いが明確になり、トレンドの強さがわかります。
また、+DIと−DIの距離が拡大しているのか縮小しているのか、あまり変化がないのかといったことから、売り買いの圧力の状態や傾向、そしてトレンドの強さの変化がわかります。
4. 実践的な使い方と注意点
4-1. 使い方と補助指標ADXとの組み合わせ
DMIは、+DIと−DIの推移や相対的な位置関係を比較することで、相場のトレンドや「トレンドの強さ」も把握できます。
また、ご案内のとおり+DIと−DIのクロスを売買サインとして利用することができます。
なお、「トレンドの強さ」について、視認性を向上させるために補助指標として利用されるのがADXやADX-Rです。

※ADXについては別記事で詳しく解説予定です。
4-2. レンジ相場ではダマシも多い

+DIと−DIが頻繁に交差するような相場局面は、明確なトレンドが形成されていないため、DMIの売買サインの信頼度は低下します。
したがって、DMIを利用する場合は、移動平均線などトレンド系指標も併用し相場の方向性を確認しつつ、レンジ相場だと判断できる場合は、DMIではなく、RSIやストキャスティクスなどを積極的に活用するようにしましょう。
5. DMIの設定期間と調整のヒント
DMIは、一般的に14期間で用いられますが、多くのチャートツールで調整可能です。DMIの算出期間を短くするほど、感度が高まり売買サインが早く出るようになります。ただしノイズも多くなる点に注意が必要です。逆に算出期間を長くするとダマシが少なくなりますが、トレンド転換の把握が遅くなります。
トレードスタイル(短期売買/スイング/中長期)に応じた調整をおこないましょう。
6. まとめ:DMIは「方向のエネルギー」を読む指標
DMIは、オシレータ系のテクニカル指標です。
トレンドレス相場で機能しやすいRSIやストキャスティクスとは異なり、トレンドフォロー型トレードを行う際の指標として役立ちます。
+DIが強いとは、上昇分の値幅が大きいことを意味し、買い手が積極的に価格を押し上げているため、強い買い意欲と上昇モメンタムが存在していることの証左です。逆に−DIが強いとは、下落分の値幅が大きいことを意味し、売り手が優勢で、市場に悲観的なセンチメントが広がっているため、強い売り圧力と下降モメンタムの存在を示唆しています。
ただし、+DIと−DIクロスだけに頼らず、トレンドの有無や相場環境を総合的に判断することが重要です。
なお、DMIの構成するラインで、トレンドの“強さ”を数値で判断できる指標「ADX」については、次の記事で詳しく解説します。
【フジトミ証券のトレードツールならDMI(方向性指数)も表示可能】
※パラメータだけでなく、ラインの色や太さも変更可能です。

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