
1. ADX(平均方向性指数)とは?
ADX(Average Directional Index)は、J. Welles Wilder Jr. が1978年に著書『New Concepts in Technical Trading Systems』で提唱した指標で、相場にトレンドが存在するか? どれほど強いかを数値で示してくれるツールです。

ADXはDMI(Directional Movement Index=方向性指数)という指標の一部で、+DI(上昇圧力の大きさ)・−DI(下落圧力の大きさ)という2つの指標をもとに算出されます。
・+DI、−DI:相場の力学(上 or 下)を測る
・ADX:トレンドの有無とその「強さ」を測る
・ADX-R:ADXのトレンドを測る補助指標でトレンドの「安定性」や「持続性」を把握
本記事では、「DMIの中のADXってなに?」「ADXだけでも使えるのか?」という方に向けて、ADXとADX-Rに絞りシンプルかつ実践的な活用法も含め解説します。DMI(+DIや−DI)については別記事『DMIとは?トレンドの方向を読み解くテクニカル指標の使い方と見方を解説』をご参照ください。
2. ADXの基本的な見方
ADXは、トレンドの有無やその強さを把握する指標です。
トレンドが強ければ上昇でも下降でもADXの数値は上がり、トレンドがない(レンジ相場)の場合は数値が低下します。

ADXは通常、0〜100の範囲で表示されますが、実際には以下のような目安でトレンドの有無や強弱を判断します:
ADXの値と相場のトレンド
・ADXが0〜20%:トレンドがない状態(横ばい/レンジ)
・ADXが20〜25%:トレンドが生まれつつある
・ADXが25〜40%:明確なトレンドが進行中
・ADXが40%以上:非常に強いトレンド(加速・過熱も)
【重要なポイント】
ADXは方向(上昇トレンド or 下降トレンド)を示しません。
上昇トレンドでも下降トレンドでも、強ければ数値は上がります。トレンドの向きについては「DMI(+DIと−DI)」、あるいは価格の動きや移動平均線などと組み合わせて確認する必要があります。
3. ADXの計算式とその意味
3-1. ADX計算のステップ(通常14期間)
① 各日の +DI と −DI を求める(詳細はこちら)
② その差の絶対値と、合計の比率を取る:
※買い圧力(+DI)と売り圧力(−DI)の差がどのくらいあるかを数値化
DX(Directional Index)= 100 × |+DI − −DI| ÷ (+DI + −DI)
③ ADXは、この DXの一定期間(例:14日)平均をとったもの
ADX = DXのn期間平均(またはWilder式の加重平均)
3-2. 数式から読み解くADXの本質

ADXは、DMI(+DIと−DI)の乖離の大きさ(=トレンドの強さ)を定量化した指標です。
・DMI(+DIと−DI)が大きく乖離 → トレンドが明確 → ADX上昇
・DMI(+DIと−DI)が接近・クロス → トレンド不在・転換 → ADX低下
4. ADX-R(Average Directional Movement Index Rating)とは?
ADX-Rは、ADXの補助指標で、ADXのトレンドを滑らかにし、「トレンド強度」の“安定性”や“持続性”を測ります。
計算式:ADX-R = (当日のADX + n日前のADX)÷ 2
※ADXのn期間移動平均を用いる場合等もあります。
ADX-Rは、ADX(トレンドの強さ)の簡易的な移動平均です。
相場の方向性(トレンド)を示すツールが移動平均なのと同様に、ADX-Rは、ADXの方向性を示しているということです。
※移動平均線とは?本当の見方・使い方を完全解説【株・FX対応】

・ADX>ADX-R、ADX-Rが上昇傾向
買い圧力と売り圧力の差が拡大傾向でトレンドが強まっている
・ADX<ADX-R、ADX-Rが下降傾向
買い圧力と売り圧力の差が均衡に向かっていて、トレンドが弱まっている
5. チャート分析におけるADXの活用法
・トレンド発生の初期察知
ADXが20%を超えて上昇を始めた場合は、相場にトレンドが発生し始めているサインです。トレンドフォロー型戦略のエントリー判断に活かせます。
※ADXでは、上昇トレンドか下降トレンドかは判断できないため、DMIや相場動向、移動平均などで売りか買いかを判断します。
・トレンド継続の確認
ADXが25〜40%の水準で上昇または横ばいを維持している場合は、上昇/下落トレンドが続いている状態です。追加エントリー(ピラミッディング)の参考になります。
・トレンド終了の察知
ADXがピークアウトして下降に転じると、トレンドの一服やレンジ転換の兆候と読み取れるため、保有しているポジションの解消を検討する段階です。
6. ADX・ADX-Rの使う際の注意点とコツ
ADXは方向性を示さない:上昇トレンドでも下降トレンドでも数値が高くなります。上昇トレンドか下降トレンドかは、他の指標(例:移動平均線、価格そのもの)で確認します。
過去のピーク水準との比較が有効:過去にADXがどの程度まで上昇したのかを確認することで、現状のトレンドの強さを相対的に評価します。
期間設定は一般に14が基本:多くのチャートツールではADXの期間設定が可能です。期間を短めにすれば感度が上がり、小さなトレンドにも素早く反応しますが、ダマシが多くなります。逆に長めにすれば小さなトレンドには反応しにくくなるためダマシは減りますが、反応速度は遅くなります。
ADX + ADX-R併用: ADXでトレンドの強さを測り、ADX-Rでその「持続力の傾向」をチェックします。
7. ADXを使った売買判断のヒント
ADXが20%未満:「カウンタートレード戦略」が機能しやすい傾向
ADXが20%超で且つ上昇局面:「トレンドフォロー戦略(ブレイクアウト型)」が優位
急激なADXの上昇は、相場の加熱・一時的なトレンドのピークを示唆することもある
※トレンドの最終局面に起きる急降下や急上昇を「セリングクライマックス」「バイイングクライマックス」と呼びます。そのため、上昇トレンド時の最終局面や下降トレンド時の最終局面におけるADXの急上昇は、「セリングクライマックス」「バイイングクライマックス」を検知にも利用できます。
8. まとめ:ADXは「トレンドの羅針盤」
ADXは、直接的な売買シグナルではなく、相場に“本物の勢い”があるかどうかを見極める羅針盤です。
ノイズに惑わされず、値動きの背景にある力学を読み解く助けとなるこの指標を、あなたのチャート分析の武器に加えてみてください。
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※パラメータだけでなく、ラインの色や太さも変更可能です。

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