
移動平均を活用したテクニカル指標の中でも、相場の過熱感やトレンドの勢いを視覚的にとらえられるのが「エンベロープ」と「移動平均乖離率」です。
この記事では、この2つの指標の違いや計算方法、チャートでの活用テクニックまで初心者の方にもわかりやすく解説します。トレンド判断や逆張りエントリーの精度を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。
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1. エンベロープ(envelope)とは?

エンベロープとは、本来「封筒」や「包み込むもの」を意味しますが、テクニカル分析では移動平均を中心に価格変動を包み込むようにバンドを描いた指標を指します。
前回ご紹介したボリンジャーバンドと同様、移動平均線の上下にバンドラインを引くテクニカル指標の中でも最もシンプルで、移動平均を中心に上下に一定の『割合』、または『値幅』で乖離させた線を引いたものです。上下1本づつでも使われますが、通常は上下に2本づつ引くことが多いです。
1-1.エンベロープの計算方法
・上方バンド2=n期間の移動平均×(1+m×2÷100)
・上方バンド1=n期間の移動平均×(1+m÷100)
・中心線=n期間の移動平均
・下方バンド1=n期間の移動平均×(1-m÷100)
・下方バンド2=n期間の移動平均×(1-m×2÷100)
※mは、乖離率又は乖離幅
※中心線の計算方法は、通常、単純移動平均を利用しますが、MACD考案者のジェラルド・アペルのように指数平滑移動平均(EMA)を利用することもあります。
1-2.エンベロープの使い方
エンベロープは、移動平均から派生したテクニカル指標となるため、中心線や上方バンド、下方バンドの方向性により相場の方向性を確認できます。
また、相場は基本的に移動平均に絡みつくように動き、バンドの範囲内に収まる習性に着目して、中心線に対する乖離が拡大したところでカウンタートレードを仕掛けることができる点が、エンベロープの特徴です。また、バンドラインへの到達を新しいトレンド形成のシグナルと捉えトレンドフォローをおこなうという方法もあります。カウンタートレード型のツールとして利用するのか、トレンドフォロー型のツールとして利用するのかの判断は、中心線の傾き(=相場のトレンド)がカギを握ります。
【日経平均株価指数 日足 エンベロープ(25、±2.5%、±5.0%)】

例えば、上記のチャートであれば、白い網掛け部分(2024年9月半ばから2025年2月頃まで)では、カウンタートレードが機能し、黄色い網掛け(2025年3月から4月頃まで、2025年4月末から6月まで)では、トレンドフォロー戦略が機能しています。
このように、エンベロープを利用する際には、中心線及び上方バンド、下方バンドなどから相場のトレンドを読み取ることが重要です。
1-3.エンベロープのパラメータ(期間、乖離率)
エンベロープを利用する際には、その乖離率をどの程度にするのかが重要です。
一般的に、株価指数(日足)の25SMAを中心線にする場合は、±5.0%と±10.0%、200SMAを中心線とする場合は、±10.0%と±20.0%などが良く利用されています。また、個別銘柄で5SMAを中心線とする場合は、±5.0%と±10.0%、25MAなら±10.0%~±30.0%程度となります。
また、為替相場の場合は、株価指数よりも安定しているため、200SMAを中心線にする場合は、±5.0%と±10.0%程度となります。
このように、中心線の期間とバンドの乖離率は、分析対象によりパラメータを調整するようにしましょう。
1-4.エンベロープのパラメータ調整のコツ
実は、後述するテクニカル指標「移動平均乖離率」を活用することで、エンベロープのパラメータ設定は可能です。
具体的には、チャートに「移動平均乖離率」を表示します。「移動平均乖離率」は、移動平均に対して価格が何パーセント乖離しているのかを示したものです。
【米ドル/円 日足チャート 200日SMAと移動平均乖離率(200)】

例えば、上記のチャートは、米ドル/円の日足チャートに200SMA、下段に移動平均乖離率(200)を表示したものです。200SMAの上下にバンドラインを描きたい場合は、下段の移動平均乖離率の最大値や最小値を確認します。
上記のチャートでは、移動平均乖離率の最大値は8.5269%、最小値は-6.8375%なので、エンベロープのパラメータは、±5%~±7%程度がマッチしそうだといえそうです。そこで、±3.0%と、±6.0%で描画したものが次のチャートになります。
【米ドル/円 日足 エンベロープ(200、±3.0%、±6.0%)

このように、エンベロープのパラメータについては、分析対象、移動平均の期間に合わせて調整する必要があり、その際は移動平均乖離率を活用すると良いでしょう。
2. 移動平均乖離率
移動平均乖離率は、移動平均に対して価格がどの程度乖離しているのかを示したチャートです。良く説明時には「チャート上の移動平均線の両端をつまんで、ピーンと張ったイメージ」と伝えています。価格が移動平均から大きく乖離した場合、それはやがて修正されて移動平均まで戻って来るという法則を、米国のグランビルが開発しました。
ところが、価格が移動平均からどの程度乖離したら修正運動がおこりやすいのかは、資産クラスや対象銘柄にもよって異なります。そこで、乖離率を利用して、過去にどのぐらいの乖離率があったのかを確認するという事です。
2-1.乖離率の計算方法
計算方法は、以下のとおりです。
移動平均乖離率(n)=(価格-n期間移動平均)/n期間移動平均×100
2-2.乖離率の見方と使い方
日経平均であれば、価格と25日移動平均線の乖離率が±5%を超えると調整局面を迎えやすく、大幅な乖離となる±10%を超えると天井や大底になる場合が多いといわれています。しかしながら、分析する銘柄、利用する足種別(日足、週足、月足、年足、イントラデイチャート等)や利用する移動平均のパラメータにより乖離の閾値は異なるため、乖離率を表示した際に、出来るだけ長い期間において、どの程度の水準が買われ過ぎ売られ過ぎかを確認し、上下の目安を付けておきましょう。
上下の目安を付けたら、相場のトレンドを確認し、トレンドレスであれば乖離率が目安とした水準から0ラインに戻るタイミングでカウンタートレードを仕掛けます。
一方で、相場が上昇トレンドまたは下降トレンドで推移している場合は、目安となる水準を超えたタイミングで利益確定をおこなったり、短期的な調整局面を狙ったトレードを行います。
3. まとめ|エンベロープと乖離率
ここまで解説のとおり、エンベロープは、移動平均に対し一定の割合を上下に加減算したバンドライン、乖離率は、移動平均に対し価格の乖離率を示したもので、描画の仕方は異なりますが、同じコンセプトで相場を分析しているツールとなります。
エンベロープと乖離率を利用すれば、トレンドの判断も逆張りの判断も可能です。
分析する銘柄や表示している足種別、移動平均の期間、相場のトレンドによって、トレンドフォローとカウンタートレードを使い分けることで、分析の精度を上げることができます。利用する場合は、エンベロープと乖離率を組み合わせて分析することをおススメします。
また、テクニカルの基本は、トレンドの分析です。古くから相場の世界では「トレンドは友達(The trend is your friend.)」とも言います。エンベロープや乖離率を利用する際には、トレンドの確認から始めるようにしましょう。
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