
今の為替相場、特に日中の相場動向は4月2日の「解放の日」※以降、読みにくくなっているように感じます。
※「解放の日」とは、2025年4月2日のこと この日に米トランプ大統領が国家非常事態を理由に、全輸入品に10%の基本関税、さらに相手国の対米関税に応じた追加関税を課す「相互関税(reciprocal tariffs)」政策を発表。これを強調して「Liberation Day」と呼んだことから、メディアやマーケット関係者はこの日を「解放の日」として利用しています。
そこで今回、米ドル円と主要な対円通貨ペアの日中足(イントラデイチャート)におけるボラティリティを調べてみました。
1.4月2日以降はユーロが最も強い通貨
「解放の日」以降の米ドル円と主要対円通貨ペアの動向をみると、ユーロ円が最も買われており、次いで豪ドル円と英ポンド円が買われ、米ドル円は弱いことがわかります。
通貨ペアではなく、通貨の強弱を順位付けすると、ユーロ>>>豪ドル>英ポンド>日本円>米ドルになっています。

2.米ドル円を除く通貨ペアは日中の値動きが小さい傾向
主要通貨の中で直近の相場動向においては、ユーロが最も強いわけですから、「さぞや日中の値動きも大きいのでは?」と思う方も多いかもしれません。
古くからのトレーダーの中には、「いや、昔よく殺人通貨と言われていた英ポンドのボラが高いと思うな」なんて考えている方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、実際の日中足における相場動向からみると、米ドル円のボラティリティは急上昇・急低下が多いのに対し、それ以外の通貨ペアは、「解放の日」以前と比べてボラティリティが低くなっているというのが実情です。
以下のグラフは、今年2月半ばから7月17日までの米ドル円、ユーロ円、英ポンド円、豪ドル円の30分足(オレンジ色のライン)に、年率化日次対数リターンの標準偏差を利用したボラティリティ(灰色の棒グラフ)、さらにこのボラティリティの48MA(黄色のライン)を描画したものです。グラフ前半でボラティリティが大きくなっているタイミングが4月2日ごろになります。
※年率化日次対数リターンの標準偏差とは、年間換算した1日あたりの値動きの標準偏差
これらのグラフから各通貨ペアのボラティリティについていえることは、米ドルは日によって急上昇・急低下することがある(TACO相場)けれど、それ以外の対円通貨ペアは「解放の日」以前よりも日々のボラティリティが低くなっているということです。
※TACO相場:TACOは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)」の頭文字をとった言葉で、TACO相場とは、トランプ発言とその否定によって相場が急落と急騰(あるいは急騰と急落)を引き起こすことを意味します。
【主要4通貨ペアの相場推移と日々のボラティリティの変化 30分足】

その一方で、米ドル円相場は、4月後半から概ね140円から150円の間で推移しているのに対し、それ以外の通貨ペアは円に対して買われている=上昇トレンドになっているということもわかります。
さらに、米ドル円については、トランプ関税とそれに伴う物価高の影響や日米の金融政策の方向性などから来年に向けて(円高)ドル安方向への見通しを打ち出す投資銀行が多く、25年3月末の中央値は1ドル140円、26年3月末は139円、26年6月末は138円となっています。
【主要銀行の来年末に向けた為替見通し(ハウスビュー)】

※140円を基準に円安予想は緑色に円高予想はベージュ色にグラデーション
もちろん、コメルツ銀行やみずほ銀行、クレディアグリコル、バークレイズのように個々の投資銀行によっては、円安を予想する金融機関もあり、実際に、潜在的なものも含め以下のような円安材料も数多く散見されます。
燻る円安材料
・機関投資家の円ロングポジションは歴史的な高水準にあるため、一旦これらを解消する動きになると円安に動きやすい
・日米の金融政策の違いこそあれ、日本の政策金利は米国に比べて依然として低い水準にある
・日本のCPIは、欧米に比べても高い水準にある(高インフレの国の通貨は売られやすい)
・直近の経済指標を見ると、米景気は概ねそれほど弱くなっていない(今後、弱くなるかどうかは別として)
・参議院選挙の結果次第だが、与党大敗となる場合は、議案や法案が通りにくくなる(⇒政策が進まない)
・それほど米国から資本流出が顕著なわけではない
・日本の政府及び日本企業の米国投資が増えていくことが約束されている(実需としての円売りドル買い)
・NISAをはじめとする日本の個人投資家の米国投資のフローも増加していくと考えられる(実需としての円売りドル買い)
当面のFX市場の主戦場:米ドルは外した方がよい?
こういった状況下、個人的には足下の米ドル円相場は、円安傾向で推移するものと考えています。
ただし、トランプ政権下では、昨日のTACO相場のような突発的な乱高下が今後も懸念されます。
また、来年に向けてということであれば、どこかで円高トレンドに転換する可能性も否定できません。
その一方で、マーケットにおいて確認できているのは、ユーロ圏への資金流入です。しかもユーロ円、英ポンド円、豪ドル円などの日中のボラティリティは比較的落ち着いているにも関わらず、トレンドは明確です。
明確なトレンドが継続しているにもかかわらず、日々のボラティリティは比較的落ち着いているということは、言い換えれば、クロス円の通貨ペアはテクニカル的な観点でも利益を狙いやすい相場環境といえるでしょう。
もちろん、今後それらのトレンドが変化しないとも限りませんが、現状のFX市場においては、日中のボラティリティ急変を避けたいのであれば、ドルストレートではなく、ユーロ円や英ポンド円などのクロス円の方が取引しやすいのではないかと考えています。
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