
1. ドンチャンチャネルとは?
ドンチャンチャネル(Donchian Channel)は、過去一定期間の高値・安値を基準にトレンドの把握をしようとするテクニカル指標です。
※価格が過去一定期間の高値や安値を超える(ブレイクする)ことでトレンドの把握をおこないます。
トレードツールやテクニカル分析の本などにより名称は様々で、ドンチャンチャンネル、高低線、H-Lバンド、ハイローチャネル、ハイエストローエストバンドなどと書かれている場合があります。
※テクニカルアナリストの教科書:「ドンチャンチャンネル」
※日本テクニカル分析大全:高低線
フジトミ証券のフジトミトレーダー365FX、フジトミトレーダー株365、FITSブラウザ版ではHLバンドを選択して表示可能です。
※FITS匠では、「ハイローチャネル」を選択することで表示可能です。
【フジトミ証券 フジトミトレーダー365FX USDJPY 日足 HLバンド(20)】

なお、ドンチャンチャネルは、1950年代に「トレンドフォローの父”the Father of Trend Following”」と呼ばれるリチャード・ドンチャン(Richard Davoud Donchian)が開発した「週次ルール(The Turtle Trading Rule)」と呼ばれる手法で、それが発展しドンチャンチャネルになりました。
また、ドンチャンチャネルを活用した投資集団がタートルズです。以下に週次ルールとタートルズについて少し触れておきます。
1-1. 週次ルール
1-1-1. 4週ルール
1970年に出版された「トレーダーズノートブック(Trader’s Notebook)」で複数のシステムトレードを検証比較した結果、リチャード・ドンチャンが開発した「4週ルール」が最も機能したと結論付けられました。「4週ルール」の詳細は、単純で以下のとおりです。
A 過去4週間の最高値を価格が上回ったときは、ショートポジションを決済しロングポジションを保有する
B 過去4週間の最安値を価格が下回ったときは、ロングポジションを決済しショートポジションを保有する
なお、週次ルールに対する主な批判は、天井や底値を見つけられないことで、これは全てのトレンドフォロー(順張り)戦略に共通するものです。
1-1-2. 修正4週ルール
4週ルールに加え、2週ルールあるいは1週ルールを利用して決済をおこなうというものです。
A 過去4週間の最高値を価格が上回ったときにロングポジションを保有し、過去2週間(あるいは過去1週間)の最安値を価格が下回ったときに決済する
B 過去4週間の最安値を価格が下回ったときにショートポジションを保有し、過去2週間(あるいは過去1週間)の最高値を価格が上回ったときに決済する
1-1-3. メリル・リンチの研究
メリル・リンチ社は、週次ルールの設定期間を各コモディティマーケットに最適化する研究を1979年2月にThe Merrill Lynch Commodity Reseach Report,”Computerized Trading Techniques”で発表しました。以下がその一例です。
砂糖市場:木曜日を週末とした5週ルール
大豆市場:月曜日を週末とした2週ルール
1-1-4. 投資集団タートルズ
商品先物の投資家として25歳の時には億万長者になっていたリチャード・デニス(Richard J. Dennis)が、35歳のときに、高校時代の同級生で数学教師をしていたウィリアム・エックハートと「優秀なトレーダーを育成できるか」という議論の末、賭けをしました。
リチャード・デニスは、2度にわたって「ウォール・ストリート・ジャーナル」に広告を出し、23人(男性21人・女性2人)の素人投資集団をつくります。この投資集団がタートルズで、リチャード・デニスがタートルズに教えたトレードルールが、ドンチャンチャネルを利用した売買ルールです。
2. 基本構造と仕組み
ドンチャンチャネルは、以下の2本のラインで構成され、ツールによっては、その中心線を描画できるものもあります。
・上方バンド(Upper Band) 過去n期間の最高値 =Max(High,n)
・下方バンド(Lower Band) 過去n期間の最安値 =min(Low,n)
・中心線(Middle Line) 上限と下限の中間値 =(Max(High,n)+min(Low,n))/2
⇒中心線は、一目均衡表の基準線(26)や転換線(9)と計算式が同じ
たとえば「日足チャートで期間nを過去20期間(n=20)」と設定した場合、上方バンドは過去20日間の最高値、下方バンドは過去20日間の最安値です。
【フジトミ証券 フジトミトレーダー365FX USDJPY 日足 HLバンド(20)】
HLバンド描画のイメージ

3. どんな時に使うの?
ドンチャンチャネルは、主にブレイクアウト戦略で活用されます。具体的には以下のとおりです。
・価格が上方バンドを上回った場合は「買い」
・価格が下方バンドを下回った場合は「売り」
特に、トライアングルやレクタングルなどのレンジ相場(横ばいトレンド、トレンドレス)が続いた後、相場がその価格帯を超えて推移し始めるタイミング、即ち新たなトレンドが発生した初動を狙うトレーダーにとって、強力な武器となります。
【フジトミ証券 フジトミトレーダー365FX USDJPY 日足 HLバンド(20)】
HLバンドを利用した売買のイメージ
・買いサイン:赤い矢印
・売りサイン:青い矢印

上記のチャートから、直近の米ドル円の日足チャートは、今年1月から4月半ばまで下降トレンドで推移していましたが、それ以外はトレンドレスだったことが分かります。
4. 設定期間の目安
設定期間は、日足チャートでは「20」「10」「40」「55」などが一般的※ですが、スキャルピング、デイトレード、スイングトレード、ポジショントレードといったトレードスタンスと利用する足種別(月足、週足、日足、日中足等)によってカスタマイズして利用しましょう。
※ドンチャンチャネルブレイク(パラメータは40、20)、タートルズブレイクアウト(日足でパラメータは20、10、又は、55、20)
期間と特徴
短期(5〜20程度) 反応が早いがダマシが多い
中期(20〜30) バランスが取れていて初心者向け
長期(50〜) 中長期のトレンドの持続性を重視する場合に有効
以下は、同じ期間の米ドル円で期間(パラメータ)の異なるドンチャンチャネルを利用した売買結果(バックテストの結果)です。
【USDJPY 日足 HLバンド(20、10) 期間2020年1月1日から2025年6月26日】
Long:価格がドンチャンチャネル(20)の上方バンドを上回ったら「買い」、ドンチャンチャネル(10)の下方バンドを下回ったら決済
Short:価格がドンチャンチャネル(20)下方バンドを下回ったら「売り」、ドンチャンチャネル(10)の上方バンドを上回ったら決済
※取引単位は1通貨単位
※以下のチャートはシミュレーション結果であり、将来の成果を保証するものではありません。

【USDJPY 日足 HLバンド(40、20) 期間2020年1月1日から2025年6月26日】
Long:価格がドンチャンチャネル(40)の上方バンドを上回ったら「買い」、ドンチャンチャネル(20)の下方バンドを下回ったら決済
Short:価格がドンチャンチャネル(40)の下方バンドを下回ったら「売り」、ドンチャンチャネル(20)の上方バンドを上回ったら決済
※取引単位は1通貨単位
※以下のチャートはシミュレーション結果であり、将来の成果を保証するものではありません。

5. 実践例:順張り戦略での活用法
上記では、比較的シンプルな売買サインについて期間(パラメータ)を変更し、お伝えしましたが、以下にいくつかの売買アイデアについてご紹介します。ポジションの保有(エントリー)の条件は、基本的に同じとします。
エントリー:上方バンドを終値が上回ったら買いエントリー、下方バンドを下回ったら売りエントリー
決済1:反対側のバンドを終値が超えたら決済
決済2:期間が短いドンチャンチャネルの反対側のバンドを終値が超えたら決済
決済3:価格が中心線を超えたら決済
決済4:他のテクニカル指標を利用
このように、明確な基準に基づくルール化が可能なため、自動売買にも適しています。
6. 注意点:ダマシとレンジ相場への弱さ
ドンチャンチャネルはトレンド相場に強く、レンジ相場には弱いという特徴があります。特に、上方バンドや下方バンドを超えたというだけでエントリーしてしまうと、ダマシとなってしまうリスクが高まります。
以下のチャートは、豪ドル/NZドル(AUDNZD)の日足でドンチャンチャネル(10、20)を使用してシミュレーション(バックテスト)をおこなった結果です。
期間は、2020年1月1日から2025年6月26日までです。
豪ドル/NZドルは、あまり相場に方向性が出にくい通貨ペアとして知られています。その理由は、どちらの通貨も同じオセアニア通貨で、オーストラリアやニュージーランドそれぞれの国における独自の材料よりも、世界の景気、米ドルの動きなどに左右されることが多いからです。
※それぞれの国の金融政策、豪州においては中国の景気や鉄鉱石・石炭需要、ニュージーランドにおいては、乳製品などの世界的な需給などが材料視されることがあります。
【AUDNZD 日足 HLバンド(20、10) 期間2020年1月1日から2025年6月26日】
Long:価格がドンチャンチャネル(20)の上方バンドを上回ったら「買い」、ドンチャンチャネル(10)の下方バンドを下回ったら決済
Short:価格がドンチャンチャネル(20)の下方バンドを下回ったら「売り」、ドンチャンチャネル(10)の上方バンドを上回ったら決済
※取引単位は1通貨単位
※以下のチャートはシミュレーション結果であり、将来の成果を保証するものではありません。

下段の損益グラフ(白いライン:評価損益を含む)を見ると、白く網掛けした期間がドローダウンになっています。
この間のAUDNZDの相場推移は、概ねレンジ相場になっていることがわかります。一方で、損益グラフが上昇しているタイミングは相場にトレンドが出ているのも確認できます。
このように、レンジ相場ではダマシが続く可能性が高いのです。
ダマシを回避するためには、トレンドの方向性やその強さを確認するために以下に挙げたテクニカル指標の併用をおすすめします。
・ADXが上昇傾向か(ADXが20%を上回っていると強いトレンドが発生している可能性が高い)
・移動平均線の方向性と価格との関係(できれば、長短2つの移動平均線で方向性と傾き、価格との位置関係を確認)
・ボリンジャーバンドのエクスパンション(ボリンジャーバンドの上下のバンドが両方とも上下に開いているか)
※ボリンジャーバンドのBand Widthが拡大
・オシレータ系指標が中心線(RSIやストキャスティクスなら50%、モメンタム系なら0ライン)の上側で上昇基調、あるいは下側で下降基調
7. まとめ:ドンチャンチャネルは「息の長いトレンドを狙う」ための優秀な指標
トレンドフォロー型の売買戦略といえば、移動平均のゴールデンクロス/デッドクロス(GC/DC)をイメージされる方も多いかもしれませんが、それ以上に世界的にメジャーな売買戦略がドンチャンチャネルを利用したトレード戦略です。
ドンチャンチャネルは非常にシンプルでありながら、トレンドの発生を適格に捉える強力なツールです。トレンドレス相場では機能しにくいデメリットはありますが、設定期間を調整し、他のテクニカル指標と組み合わせることで、再現性の高いトレード戦略が構築できます。
初心者にもわかりやすく、順張りトレードの第一歩として最適な指標といえるでしょう。
ちなみに、ドンチャンチャネル、ドンチャンチャンネル、HLバンド、HLチャネル、高低線など金融系の用語は、統一されていない言葉が多いように感じます。
たとえば、「建玉とポジション」、「逆指値注文とストップオーダー、ストップ注文」、「マージンコールと追証、証拠金不足」など。
特に、このドンチャンチャネルについては、私の場合は、まだ個人投資家がPCでトレード出来ない時代に、情報端末や書籍で「高低線」として覚えました。
また、2000年頃からネットトレードが台頭し始めて、国内系トレードツール上では「HLバンド」や「HLチャネル」として提供されることが多かったように記憶しています。
更に、「channel」の日本語表記も「チャネル」と「チャンネル」、どちらであっても意味はわかるので、あまり変わらないのではないかなとも思うのですが、こだわりが強い方も多いようで...皆さんはどう思いますか?
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