★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』①株価の下落調整、②債券の利回り低下、または、③その両方の調整が必要となる。
7日の米国株主要三指数は、全てで反発する展開となった。そして、米長期金利は、売り買い交錯する展開になったものの買い優勢となり金利は前日比で低下する展開となった。イールドスプレッドは、NYダウは前日比で縮小した一方で、S&P500指数とNASADQ総合指数は前日比で拡大する展開となった。シティバンクのストラテジー指数のエコノミックサプライズ指数はマイナス圏へ低下している。7日終了時でマイナス6.9(6日:マイナス7.8)と前日比でマイナス圏で縮小する展開となった。この指数のマイナス推移は、市場予想を下回る経済指標が増えていることを示している。そして、米景気はゼロ近辺で推移していることから鈍化していることを示している。
★NY株式市場では、対中通商交渉の開始を好感した買いに寄り付き後は上昇した。その後、検索グーグルを運営するアルファベット(GOOG)の下落に押され、ナスダックは下落に転じた。さらに、トランプ大統領が通商交渉のために対中関税率を引き下げることはないとの姿勢を示すとさらなる売り材料となった。連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り政策金利の据え置きを決定し、見通しの不透明性に言及も経済が引き続き堅調との見解を示し買いが再開した。終盤にかけ、大統領がバイデン政権時代の人工知能(AI)半導体輸出規制を撤廃すると発表し、ナスダックもプラス圏に回復し終了した。一方、米長期金利は、「トランプ米大統領は中国を交渉の場に引き出すための関税引き下げに消極的」と伝わると買い(利回りは低下)が入った。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が早期利下げに慎重な姿勢を示すと売り(利回りは上昇)が出たため上値は限定的だった。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
米国株のVIX指数は24.75から23.55へ低下した。そして、VIX指数が20ポイント半ばで推移していることで、リスク回避の動きは強い水準を維持している。そして、債券利回りに対して、株式指数の益利回りがNYダウとNASDAQ総合指数が下回っていることで、株式市場の割高感が強まっている。基本的には債券利回りよりリスクの高い株式益利回りの方が高いのが正常な状態であるため、逆転するということは非常に株式市場の割高感が強いことを示す。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
米国主要三指数のNYダウとNASDAQ総合指数は、イールドスプレッドが益利回りより米10年債利回りの方が高いという異常なほどの割高感が強いままである。普通に考えればリスクの大きい株式の益利回りよりも、リスクが小さい債券利回りの方が低いというのが正常な市場である。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲2.685%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/10/9‐+0.175%、23/10/19₋+0.335%
24/4/26‐+0.412%、24/5/10₋+0.376%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-▲6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・5月6日+0.105%⇒5月7日:予想+0.112%(前日比で縮小:割高)
5月7日のNYダウが反発した一方で、米長期金利が低下したもののイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲2.685%から▲2.797%平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲4.338%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲4.214%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲4.653%下回った。20年3月23日の6.017%から▲6.129%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.387%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/10/9‐▲0.274、23/10/19₋▲0.143%
24/4/11‐+0.051、24/4/25₋+0.056%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%、20/3/23-▲6.222%
・5月6日:▲0.345%⇒5月7日:予想▲0.349%(前日比で拡大:割安)
S&P500が小幅反発した一方で、米長期金利は低下したことでイールドスプレッドは前日比でわずかに拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)だった。平均値の▲2.387%から▲2.038%と平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲3.520%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲3.653%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲3.830%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲4.150%下回った。20年3月23日の6.222%から▲5.873%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.286%
・直近イールドスプレッド縮小:23/10/9‐+1.395%、23/10/19₋+1.546%
24/4/11‐+1.215%、24/4/16₋+1.183%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・5月6日:+0.465%⇒5月7日予想+0.452%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは小幅反発した一方で、米長期金利は低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)だった。平均値の▲1.286%から▲1.738%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.631%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.835%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.950%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲3.255%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.546%下回った。
★NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、米長期金利が低下した一方で、株価指数は小幅反発したものの前日比でイールドスプレッドは拡大した。しかし、スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドでは、債券利回りを益利回りが下回まわる状態に転換した。益利回りが債券の利回りを下回ったことから、債券割安・株式割高の状態が強まった。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。