★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』①株価の下落調整、②債券の利回り低下、または、③その両方の調整が必要となる。
27日は、NY株式相場は上昇する展開だった。翌日引け後のエヌビディアの決算発表を控えた様子見が続いたものの、前日に2.25%下落したエヌビディアが1.46%高と反発し、半導体株やハイテク株の上昇をけん引した。一方、米長期金利は欧州債券が売られたこともあり、連れて売りが出て金利は上昇した。イールドスプレッドは米国株主要三指数全てで前日比で割高になった。シティバンクのストラテジー指数のエコノミックサプライズ指数はマイナス圏へ低下している。27日終了時ではマイナス25.1(26日:マイナス27.9)と前日比でマイナス幅は連日で縮小した。ただ、この指数のマイナス推移は、市場予想を下回る経済指標が増えていることを示している。現在は利下げ期待が株価を下支えしているが、先行きのファンダメンタルズの悪化は株式市場には下落要因となりやすい。そして、全般的に平均値を下回るイールドスプレッドからは、過熱感が維持していることで、株価の調整色が長引く可能性があるため注意したい。米国の景気減速感が強まっている。
★NY株式市場では、長期金利の上昇で寄り付き後は下落した。その後、8月消費者信頼感指数が予想外に改善したため相場も回復した。人工知能(AI)に必要な半導体製造メーカーのエヌビディア(NVDA)の決算発表を28日に控え期待感に、ハイテクが上昇に転じて相場を支援した。終盤にかけてNYダウもかろうじてプラス圏を回復し終了した。NYダウは連日で過去最高値を更新した。一方、米長期金利は、欧州債相場が下落すると、米国債にも売り(利回りは上昇)が波及した。8月米消費者信頼感指数が予想を上回ったことも相場の重しとなった。ただ、2年債入札が「好調」だったことが分かると買い戻しが入ったため、下げ渋った。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
米国株のVIX指数は16.15から15.43へ低下した。そして、VIX指数が20を下回っていることで、リスク回避の動きが強まる動きになっていない。しかし、債券利回りに対して、株式指数の益利回りがかなり割高感が強まっていることには注意が必要。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
米国主要三指数のNASDAQ総合指数は、イールドスプレッドが益利回りより米10年債利回りの方が高いという異常なほどの割高感が強いままである。普通に考えればリスクの大きい株式の益利回りよりも、リスクが小さい債券利回りの方が低いというのが正常な市場である。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲2.842%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/10/9‐+0.175%、23/10/19₋+0.335%
24/4/26‐+0.412%、24/5/10₋+0.376%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-▲6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・8月26日▲0.129%⇒8月27日:予想▲0.118%(前日比で縮小:割高)
8月27日のNYダウは3日小幅続伸したうえ、米長期金利も小幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)だった。平均値▲2.842%から▲2.724%平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲4.108%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲3.984%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲4.423%下回った。20年3月23日の6.017%から▲5.899%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.505%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/10/9‐▲0.274、23/10/19₋▲0.143%
24/4/11‐+0.051、24/4/25₋+0.056%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・8月26日:▲0.450%⇒8月27日:予想▲0.434%(前日比で縮小:割高)
S&P500が2日営業日ぶりに小幅反発したうえ、米国長期金利も小幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.505%から▲2.071%と平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲3.435%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲3.568%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲3.745%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲4.065%下回った。20年3月23日の6.222%から▲5.788%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.397%
・直近イールドスプレッド縮小:23/10/9‐+1.395%、23/10/19₋+1.546%
24/4/11‐+1.215%、24/4/16₋+1.183%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・8月26日:+0.586%⇒8月27日予想+0.600%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが2営業日ぶりに小幅反発したうえ、米長期金利も小幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.397%から▲1.997%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.779%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.983%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲3.098%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲3.403%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.694%下回った。
★NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、米長期金利が小幅上昇したうえ、株価指数が2営業日ぶりに小幅反発したことで前日比でイールドスプレッドは縮小した。スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドでは、債券利回りを益利回りが下回った状態が継続。益利回りが債券の利回りを下回ったことから、債券割安・株式割高の状態が続いている。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。