★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』①株価の下落調整、②債券の利回り低下、または、③その両方の調整が必要となる。
3日は米長期金利は低下した一方で、米国株主要三株価指数はまちまちの展開となった。しかし、イールドスプレッドは全てで前日比で割安となった。経済指標が総じて弱い結果となり米10年債利回りが低下したことや、第2四半期の出荷台数が予想を上回ったテスラの大幅続伸や、AIラリーの主役のエヌビディアの大幅高にけん引されハイテク株を中心に上昇した。シティバンクのストラテジー指数のエコノミックサプライズ指数はマイナス圏へ低下している。3日終了時ではマイナス44.0(2日:マイナス30.2)と前日比でマイナス幅は拡大した。この指数のマイナス推移は、市場予想を下回る経済指標が増えていることを示している。現在は利下げ期待が株価を下支えしているが、先行きのファンダメンタルズの悪化は株式市場には下落要因となりやすい。そして、全般的にイールドスプレッドからは、過熱感が強まっていることで、急速に株価が調整色を強める可能性があるため注意したい。米国株主要三指数で、NYダウとNASDAQ総合指数の益利回りが米長期利回りを下回る状況で割高感が強い。
★NY株式市場では、寄り付きはまちまちとなった。朝方発表された労働関連指標が弱く、長期金利が低下したことが相場を支えた。独立記念日祭日前日の短縮取引で動意が乏しく、加えて取引終了後に6月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨、5日に6月雇用統計の発表を控え、様子見姿勢が広がる中、NYダウはわずかに下落した。テスラとエヌビディアの上昇に押し上げられたナスダック指数は堅調に推移し、最高値を更新して取引を終えた。一方、米長期金利は、6月ADP全米雇用報告や6月米ISM非製造業指数など、この日発表の米経済指標が軒並み低調な内容だったことが分かると買い(利回りは低下)が優勢となった。なお、この日は独立記念日の前日で短縮取引だった。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
米国株のVIX指数は12.03から12.09へわずかに上昇した。VIX指数が20を下回っていることで、リスク回避の動きが強まる動きになっていない。しかし、債券利回りに対して、株式指数の益利回りがかなり割高感が強まっていることには注意が必要。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲2.875%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/10/9‐+0.175%、23/10/19₋+0.335%
24/4/26‐+0.412%、24/5/10₋+0.376%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-▲6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・7月2日+0.550%⇒7月3日:予想+0.475%(前日比で拡大:割安)
7月3日のNYダウは反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値▲2.875%から▲3.350%平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲4.701%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲4.577%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲5.016%下回った。20年3月23日の6.017%から▲6.492%下回った。
米国主要三指数の全てでイールドスプレッドが益利回りより米10年債利回りの方が高いという異常なほどの割高感が強いままである。普通に考えればリスクの大きい株式の益利回りよりも、リスクが小さい債券利回りの方が低いというのが正常な市場である。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.529%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/10/9‐▲0.274、23/10/19₋▲0.143%
24/4/11‐+0.051、24/4/25₋+0.056%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・7月2日:+0.136%⇒7月3日:予想+0.086%(前日比で拡大:割安)
S&P500は3日続伸した一方で、米国長期金利が低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.529%から▲2.615%と平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲3.955%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲4.088%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲4.265%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲4.585%下回った。20年3月23日の6.222%から▲6.308%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.421%
・直近イールドスプレッド縮小:23/10/9‐+1.395%、23/10/19₋+1.546%
24/4/11‐+1.215%、24/4/16₋+1.183%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・7月2日:+1.275%⇒7月3日予想+1.231%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが3日続伸した一方で、米長期金利が低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.421%から▲2.652%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲3.410%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲3.614%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲3.729%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲4.034%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲5.325%下回った。
★NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、米長期金利が低下した一方で、株価指数は3日続伸したものの前日比でイールドスプレッドは拡大した。スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドでは、債券利回りを益利回りが下回った状態が継続。益利回りが債券の利回りを下回ったことから、債券割安・株式割高の状態が続いている。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。