★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』①株価の下落調整、②債券の利回り低下、または、③その両方の調整が必要となる。30日は米長期金利が上昇したうえ、主要三株価指数は全てで上昇する展開になった。そのため、イールドスプレッドは主要三指数の全てで縮小する展開になった。そのため、全体的に過熱感が異常に強いことから、急速に調整色が強まる可能性があるので注意したい。特にNYダウとNASDAQ総合指数の益利回りが米長期利回りを下回る状況で割高感が強い。
★NY株式市場では、主要三指数は全てで上昇する展開になった。イスラエルによるガザ地上戦作戦が慎重に進められているとの判断から脅威が緩和し、買戻しが優勢となり寄り付き後は上昇した。その後も値ごろ感からの買いや、連邦準備制度理事会(FRB)が今週開催する連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送り観測を受け終日堅調に推移した。原油の上昇も一段落し、終盤にかけて上昇幅を拡大して終了した。また、前週末までに3日続落し約7カ月ぶりの安値を更新したあとだけに短期的な戻りを期待した買いが入った。一方、米長期金利は、米国株相場が大幅に上昇すると、相対的に安全資産とされる米国債に売り(利回りは上昇)が出た。米財務省はこの日、10-12月期の資金調達額が7760億ドルになるとの試算を公表した。同じ時期の借入額としては過去最大になるものの、従来見通しからは減少した。国債増発への懸念が和らぎ買い戻し(利回りは低下)が入る場面もあった。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇したうえ、主要株価三指数も上昇する展開になったことで、全てで縮小する展開になった。全般的に割高感が非常に強まっていることから、上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
米国株のVIX指数は21.27から19.75へ低下した。VIX指数が20を下回ったことで、リスク回避の動きが弱まってきている。そして、債券利回りに対して、株式指数の益利回りがかなり割高感が強まっていることには注意が必要。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.027%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/7/6‐▲0.381%、23/8/3₋▲0.260%
23/10/9‐+0.175%、23/10/19₋+0.335%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-▲6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・10月27日+0.041%⇒10月30日:予想+0.169%(前日比で縮小:割高)
10月30日のNYダウは大幅反発したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.027%から▲3.196%平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲4.395%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲4.271%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲4.710%下回った。20年3月23日の6.017%から▲6.186%下回った。
NYダウとNASDAQ総合指数のイールドスプレッドは益利回りより米10年債利回りの方が高いという異常なほどの割高感が強まった。普通に考えればリスクの大きい株式の益利回りよりも、リスクが小さい債券利回りの方が低いというのが正常な市場である。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.645%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/7/6‐▲0.828%、23/8/3₋▲0.642%
23/10/9‐▲0.274、23/10/19₋▲0.143%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・10月27日:▲0.540%⇒10月30日:予想▲0.427%(前日比で縮小:割高)
S&P500は反発したうえ、米国長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.645%から▲2.218%と平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲3.442%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲3.575%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲3.752%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲3.926%下回った。20年3月23日の6.222%から▲5.795%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.547%
・直近イールドスプレッド縮小:23/6/22‐+0.562%、23/8/3₋+0.913%
23/10/9‐+1.395%、23/10/19₋+1.546%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・10月27日:+1.169%⇒10月30日予想+1.266%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)だった。平均値の▲1.547%から▲2.813%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲3.445%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲3.649%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲3.764%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲4.069%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲5.360%下回った。
★NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価指数も続伸したことで前日比で縮小した。しかし、スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドでは、債券利回りを益利回りが下回った状態が継続。益利回りが債券の利回りを下回ったことから、債券割安・株式割高の状態が続いている。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。