★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』①株価の下落調整、②債券の利回り低下、または、③その両方の調整が必要となる。16日は米長期金利が上昇した一方で、主要三株価指数は続落する展開になった。イールドスプレッドは、主要三指数でNYダウとS&P500指数は縮小する一方で、NASDAQ総合指数は変わらずの展開になった。ただ、全体的に過熱感が強いことから、急速に調整色が強まる可能性があるので注意したい。特にNASDAQ総合指数の益利回りが米長期利回りを下回る状況で割高感が強い。
★NY株式市場では、主要三指数は全てで続落する展開になった。中国株式相場の下落を警戒した売りに、寄り付き後は下落した。その後、主要小売り企業の好決算を好感し一時プラス圏を回復も、予想を上回った住宅着工件数や鉱工業生産を受けて金利が上昇すると再び売られた。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月開催分)で、インフレリスクにより追加金融引き締めが必要となる可能性が示唆されたため金利高を警戒し続落した。終盤にかけて下げ幅を拡大し終了した。一方、米長期金利は、予想を上回る7月米鉱工業生産を受けて売りが先行した。7月25-26日分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で一段の金融引き締めの可能性が示唆されると売り(利回りは上昇)が加速した。利回りは一時4.2760%前後と昨年10月24日以来の高水準を付けた。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇した一方で、主要株価三指数は全てで続落したものの、NYダウとS&P500指数は縮小する一方で、NASDAQ総合指数は変わらずの展開になった。全般的に割高感が非常に強まっていることから、上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。一方で、米国株のVIX指数は16.46から16.78へ上昇した。VIX指数が20を下回っているため、一旦は市場は落ち着く展開になっている。しかし、債券利回りに対して、株式指数の益利回りがかなり割高感が強まっていることには注意が必要。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.074%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/6/7‐▲0.809%、23/6/22-▲0.667%
23/7/6‐▲0.381%、23/8/3₋▲0.260%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-▲6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・8月15日:▲0.334%⇒8月16日:予想▲0.318%(前日比で縮小:割高)
8月16日のNYダウは続落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.074%から▲2.756%平均値より下方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲3.908%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲3.784%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲4.223%下回った。20年3月23日の6.017%から▲5.699%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.679%
・直近イールドスプレッド縮小: 23/6/7‐▲1.243%、23/6/22‐▲1.102%
23/7/6‐▲0.828%、23/8/3₋▲0.642%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・8月15日:▲0.752%⇒8月16日:予想▲0.751%(前日比で縮小:割高)
S&P500はが続落した一方で、米国長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.679%から▲1.928%と平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲3.118%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲3.251%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲3.428%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲3.748%下回った。20年3月23日の6.222%から▲5.471%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.590%
・直近イールドスプレッド縮小:23/6/7‐+0.446%、23/6/22‐+0.562%
23/7/7‐+0.824%、23/8/3₋+0.913%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・8月15日:+0.861%⇒8月16日予想+0.861%(前日比で変わらず)
NASDAQは続落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で変わらず(米国10年債金利に対して米国株は前日比で変わらず)だった。平均値の▲1.590%から▲2.451%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲3.040%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲3.244%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲3.359%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲3.664%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.955%下回った。
★NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、米長期金利が上昇した一方で、株価指数は続落したものおn前日比で変わらずだった。スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドでは、債券利回りを益利回りが下回った状態が継続。益利回りが債券の利回りを下回ったことから、債券割安・株式割高の状態が続いている。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。