★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』①株価の下落調整、②債券の利回り低下、または、③その両方の調整が必要となる。1日は米長期金利が低下した一方で、主要三株価指数は反発する展開となった。イールドスプレッドはNYダウとNASDAQ総合は拡大した一方で、S&P500種株価指数は横ばいとなる展開になった。全体的には過熱感が強いことから、引き続き調整色が強まる可能性があるので注意したい。特にNASDAQ総合指数の益利回りが米長期利回りを下回る状況で割高感が強い。
★NY株式市場では、主要三指数全てで反発する展開になった。31日夜に債務上限を停止させる法案が下院で可決され、債務上限問題を巡る警戒感が和らぐも、冴えない小売り決算が相場を押し下げ、寄り付きは下落した。5月ADP雇用統計が市場予想を上回る伸びを見せ、また週次失業保険申請件数も市場予想ほど増えなかったことを受けて、金融引き締めが長引くとの観測も相場の重石となった。民主党のシューマー院内総務が上院での採決を急ぐ姿勢を見せると債務上限問題への警戒感が一段と和らぎ、ハイテク株の買戻しが広がったことも相場を支え、上昇に転じた後はプラス圏で推移した。一方、米長期金利は、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとの観測が引き続き債券相場の支えとなった。5月ISM製造業景気指数の発表直後には利回りが一時3.56%台まで低下した。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下した一方で、主要株価三指は全て反発する展開だった。主要三指数はNYダウとNASDAQ総合は拡大した一方で、S&P500種指数は横ばいとなる展開になった。ただ、全般的に割高感が非常に強まっていることから、上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。一方で、米国株のVIX指数は17.94から15.65へ大幅低下した。VIX指数が20を下回ってきたため、一旦は市場は落ち着く展開になった。しかし、債券利回りに対して、株式指数の益利回りがかなり割高感が強まっていることには注意が必要。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.116%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/13-▲1.556%、22/10/24-▲1.001%
22/11/7-▲1.049%、22/5/26‐▲0.821%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・5月31日:▲0.990%⇒6月1日:予想▲1.019%(前日比で拡大:割安)
6月1日のNYダウ反発した一方で、米長期金利が低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値▲3.116%から▲2.097%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲3.207%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲3.083%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲3.522%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.998%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.707%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/13-▲1.892%、22/10/24-▲1.378%
22/11/7-▲1.311%、22/5/26‐▲1.301%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・5月31日:▲1.490%⇒6月1日:予想▲1.490%(前日比で変わらず:変わらず)
S&P500は反発した一方で、米国長期金利が低下したことでイールドスプレッドは前日比でかわらず(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割変わらず)した。平均値の▲2.707%から▲1.217%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.379%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.512%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.689%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲3.009%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.732%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.627%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/24-+0.363%
22/11/7-+0.384%、22/5/26‐+0.432%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・5月31日:+0.252%⇒6月1日予想+0.245%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが反発した一方で、米長期金利が低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.627%から▲1.872%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.424%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.628%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.743%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲3.048%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.339%下回った。
★NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下した一方で、株価指数は反発したものの前日比で拡大した。スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドでは、債券利回りを益利回りが下回った状態が継続。益利回りが債券の利回りを下回ったことから、債券割安・株式割高の状態が続いている。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。