★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まりまる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』①株価の下落調整、②債券の利回り低下、または、③その両方の調整が必要となる。11日は米長期金利が上昇した一方で、主要三株価指数はNYダウは続伸したものの、S&P500指数とNASDAQ総合指数は下落する展開になった。そのため、イールドスプレッドはNYダウとS&P500指数は縮小したが、NASDAQ総合はわずかに拡大する展開になった。過熱感は引き続き高水準で維持している。
★NY株式市場では、NYダウは続伸した一方で、S&P500指数とNASDAQ総合は下落する展開になった。ディフェンシブ、循環株などの買いに支えられ、寄り付き後は上昇した。その後、イエレン財務長官が信用縮小の兆候が見られないと金融混乱の悪化回避を示唆、国内経済が並外れて強いとの見解を示したためNYダウは続伸した。一方で、重要インフレ指標の発表を控えた警戒観やNY連銀のウィリアムズ総裁があと1回の利上げが妥当と言及すると、金利が上昇に転じたためハイテクは終日軟調に推移した。主要株式指数はまちまちで終了した。一方、米長期金利は、米景気懸念が後退する中、相対的に安全資産とされる米国債に売り(利回りは上昇)が出た。3年債入札が低調と受け止められたことも相場の重しになった。ただ、グールズビー米シカゴ連銀総裁が『米連邦準備理事会(FRB)は過度に積極的な利上げに慎重であるべき』と発言すると買い戻し入り(利回りは低下)、下げ幅を縮めた。イールドスプレッドからは、米長期金利は上昇した一方で、主要三指数はまちまちとなったことで、NYダウとS&P500指数は縮小する一方で、NASDAQ総合はわずかに縮小する展開になった。全般的に割高感が非常に強まっていることから、上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。一方で、米国株のVIX指数は18.97から19.10へ上昇した。VIX指数が20を下回っていることで、過度な金融不安は後退気味になっている。このまま、VIX指数が低下するかがポイントになる。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.139%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・4月10日:▲1.300%⇒4月11日:予想▲1.275%(前日比で縮小:割高)
4月10日のNYダウが続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.139%から▲1.864%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.951%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.827%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲3.266%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.742%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.720%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・4月10日:▲1.769%⇒4月11日:予想▲1.758%(前日比で縮小:割高)
S&P500は小幅反落した一方で、米国長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.720%から▲0.962%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.111%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.244%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.421%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.741%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.464%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.646%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・4月10日:▲0.107%⇒4月11日予想▲0.111%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが続落した一方で、米長期金利が上昇したもののイールドスプレッドは前日比でわずかに拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.646%から▲1.535%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.068%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.272%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.387%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.692%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.983%下回った。
★NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利は上昇した一方で、株価指数が続落したことで前日比ではわずかに拡大した。スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、2月8日来マイナス圏に低下した。これは、益利回りが債券の利回りを上回ったことを示しており、債券利回りと比較すると割高感が後退したことを示している。ただし、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。