★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まりまる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』①株価の下落調整、②債券の利回り低下、または、③その両方の調整が必要となる。21日は米長期金利が続伸したうえ、主要三株価指数も全て続伸する展開になったことで、主要三指数のスプレッドは縮小する展開になった。そのため、過熱感はが強まる展開になっている。さらに、平均値と比較してもかなり割高感は強まっている。
★NY株式市場では、主要三指数は全てで続伸する展開になった。イエレン財務長官が講演で金融システムにも影響しかねない中小銀行保護で必要なら再び介入する方針を表明したため地銀が買い戻され寄り付き後は上昇した。期待されていた全預金保護などの規制変更の決定は『まだ時期尚早』としたため、早期の保護拡大への期待が後退し、一時伸び悩んだ。しかし、長官は同時に、現時点で金融システムは堅調との見解を示したことも金融不安後退につながり終盤にかけて、再び上昇幅を拡大し終了した。一方、米長期金利は、イエレン米財務長官が金融システム不安の拡大を防ぐために断固とした対応を取る姿勢を示すと、安全資産とされる米国債に売り(利回りは上昇)が出た。米国株相場の上昇も相場の重しとなった。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇したうえ、主要三指数も続伸する展開になったことで、全ての指数で縮小する展開になった。全般的に割高感が非常に強まっていることから、上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。一方で、米国株のVIX指数は24.15から21.38へ低下した。VIX指数が20を上回っていることで、ボラティリティが高まりやすい地合いが続いている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.147%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月20日:▲1.454%⇒3月21日:予想▲1.282%(前日比で縮小:割高)
3月21日のNYダウは続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.147%から▲1.865%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.944%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.820%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.259%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.735%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.724%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月20日:▲1.933%⇒3月21日:予想▲1.740%(前日比で縮小:割高)
S&P500は続伸したうえ、米国長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.724%から▲0.984%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.129%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.262%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.439%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.759%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.482%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.653%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月20日:▲0.205%⇒3月21日予想▲0.023%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.654%から▲1.631%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.156%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.360%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.475%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.780%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.071%下回った。
★NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価指数も続伸したことで前日比では縮小した。そのため、スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、2月8日来マイナス圏に低下した。これは、益利回りが債券の利回りを上回ったことを示しており、債券利回りと比較すると割高感が後退したことを示している。ただし、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。