★イールドスプレッドは債券利回りと株式指数の益利回りを比較して、割安・割高を分析するツールである。当然に割高な方を売って、割安な方を買うという際に一つの目安になる。一般的には、リスクゼロの米国債利回りはリスクの高い株式市場の益利回りよりも低い。また、債券利回りと益利回りのスプレッドが縮小してくると、株を売って債券を買うという取引が強まりまる。一方、スプレッドが拡大すればその逆の取引が強まる。現在はスプレッドが過度に縮小する展開になっているが、米国の利上げ基調が継続していることから、債券買いも手控えられる展開になっている。『割高解消には』株価の下落調整、債券の利回り低下、または、その両方の調整が必要となる。
★NY株式市場では、主要三指数は全て上昇する展開になった。百貨店メーシーズ(M)など一部小売りの好決算を好感した買いに寄り付き後は上昇した。小売企業の過剰な在庫処理が進み業績回復期待に伴う買いが上昇をけん引しNYダウは終日堅調に推移した。一方、週次失業保険申請件数が予想外に減少、さらに、10-12月期単位労働コスト改定値が予想を上回ったため利上げ長期化の思惑に2年債利回りが2007年来の高水準に達し、ハイテクの重しとなった。終盤にかけ、アトランタ連銀のボスティック総裁が段階的な利上げを支持し、夏の利上げ停止の可能性を示唆したためナスダック総合指数もプラス圏に回復した。株式相場は上げ幅を拡大して終了した。一方、米長期金利は、米労働市場の底堅さを示す指標が発表されると、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの観測が改めて強まり債券売り(利回りは上昇)が広がった。利回りは一時4.0893%前後と昨年11月10日以来約4カ月ぶりの高水準を付けた。イールドスプレッドからは、米長期金利は上昇したうえ、主要三指数はが上昇したことで、全ての指数で縮小する展開になった。全般的に割高感が非常に強まっていることから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。特にNASDAQ総合指数は、無リスクである米長期債利回りを下回る異常な状態となっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。一方で、米国株のVIX指数は20.58から19.59へ低下した。VIX指数が20割れとなってきたことで、割高感は強いもののボラティリティは安定してきている。。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.155%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月1日:▲1.101%⇒3月2日:予想▲0.980%(前日比で縮小:割高)
3月2日のNYダウは大幅続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.155%から▲2.175%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲3.246%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲3.122%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲3.561%下回った。20年3月23日の6.017%から▲5.037%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.728%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月1日:▲1.445%⇒3月2日:予想▲1.337%(前日比で縮小:割高)
S&P500が反発したうえ、米国長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.728%から▲1.391%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.532%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.665%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.842%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲3.162%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.885%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.660%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月1日:+0.222%⇒3月2日予想+0.316%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが反発したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.660%から▲1.976%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.495%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.699%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.814%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲3.119%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.410%下回った。
★NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価指数も反発したことで前日比で縮小した。スプレッド幅は平均値を大幅に下回っており、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、プラス圏に浮上している。これは、益利回りが債券の利回りを下回ったことを示しており、債券利回りと比較すると割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。