★NY株式市場では、主要三指数全てで上昇する展開になった。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がイベントで警戒されていたような直接的なタカ派金融政策の発言をしなかったため安心感から買われ、寄り付き後は上昇した。ただ、FRBのボウマン理事が最近の一部のインフレ減速にもかかわらずまだやるべきことがあると、追加利上げの必要性を主張すると長期金利が一段と上昇、売りが再燃し主要株式指数は一時下落に転じた。しかし、今週発表の12月消費者物価指数(CPI)ではインフレピーク達成が証明されるとの期待や中国の経済活動再開などで景気悪化への懸念が緩和し、再びプラス圏に上昇した。終盤にかけて上げ幅を拡大して終了した。一方、米長期金利は、このところ米連邦準備理事会(FRB)高官による利上げ継続に前向きな発言が目立っており、債券売り(利回りは上昇)が出やすい地合いとなった。市場では『12日発表の12月米消費者物価指数(CPI)を前に持ち高調整目的の売りが出た』との指摘もあった。イールドスプレッドからは、米長期金利は上昇したうえ、主要三指数も上昇したこと、主要三指数の全てで縮小する展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。特にNASDAQ総合指数は、無リスクである米長期債利回りとほぼ変わらない異常な状態となっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は21.97から20.58へ低下した。VIX指数が20台で推移していることで、米国株相場は不安定な動きになりやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.176%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・1月9日:▲1.715%⇒1月10日:予想▲1.603%(前日比で縮小:割高)
1月10日のNYダウが反発したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.176%から▲1.573%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.623%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.499%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.938%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.414%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.741%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・1月9日:▲1.871%⇒1月10日:予想▲1.752%(前日比で縮小:割高)
S&P500は反発したうえ、米国長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.741%から▲0.989%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.117%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.250%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.427%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.747%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.470%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.680%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・1月9日:▲0.284%⇒1月10日予想▲0.165%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.679%から▲1.514%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.014%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.218%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.333%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.638%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.929%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価指数も続伸したことで前日比で縮小した。ただ、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、ゼロ近辺で推移しており割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。