★NY株式市場では、NYダウとS&P500種指数は反落した一方でNASDAQ総合指数は続伸する展開になった。最新の雇用統計やISM非製造業景気指数を受けて、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースが一段と減速するとの見方に買われ、寄り付き後は上昇した。中国の経済活動再開期待も相場の上昇を支援した。その後、アトランタ連銀のボスティック総裁やサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が依然、ピーク金利5%以上の必要性を主張したため失速した。終盤に入り、今週控えているパウエルFRB議長の講演や消費者物価指数(CPI)を警戒した売りにダウは下落に転じた。ナスダック総合指数はプラス圏を保ち、まちまちで終了した。一方、米長期金利は、NY連銀が発表した1年先のインフレ期待が2021年7月以来の低水準を付けたことが分かると、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの観測が後退し、債券買い(利回りは低下)が進んだ。イールドスプレッドからは、米長期金利は低下した一方で、主要三指数はまちまちの動きになったものの、主要三指数の全てで拡大する展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。特にNASDAQ総合指数は、無リスクである米長期債利回りとほぼ変わらない異常な状態となっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は21.13から21.97へ上昇した。VIX指数が20台で推移していることで、米国株相場は不安定な動きになりやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.176%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・1月6日:▲1.683%⇒1月9日:予想▲1.723%(前日比で拡大:割安)
1月9日のNYダウが小幅反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値▲3.176%から▲1.453%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.503%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.379%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.818%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.294%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.742%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・1月6日:▲1.847%⇒1月9日:予想▲1.874%(前日比で拡大:割安)
S&P500は小幅反落したうえ、米国長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.742%から▲0.868%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.995%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.128%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.305%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.625%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.348%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.680%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・1月6日:▲0.282%⇒1月7日予想▲0.283%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが小幅続伸した一方で、米長期金利は低下したことでイールドスプレッドは前日比でわずかに拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.680%から▲1.397%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.896%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.100%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.215%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.520%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.811%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下した一方で、株価指数は小幅続伸したものの前日比でわずかに拡大した。ただ、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、ゼロ近辺で推移しており割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。