★NY株式市場では、主要三指数は全てで反落する展開になった。連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ減速決定期待に買われ、寄り付き後は上昇した。11月のインフレ指標の改善を受けて、タカ派色が弱まるとの期待も手伝い、堅調に推移した。午後に入り、FRBがFOMCで想定通り利上げ減速を発表も、パウエル議長はインフレ封じ込めるための利上げの道のりは長いと繰り返したため来年の利下げ観測が後退した。FRBスタッフ予測も想定以上にタカ派的な内容となり、一気に大幅下落に転じた。議長が同時に、今後、一段と利上げペースを減速する可能性に言及すると下げ幅を縮小し終了した。一方、米長期金利は、米FOMCメンバーの政策金利見通しでは、2023年末の予想が9月の4.6%から5.1%に引き上げられ、市場の想定を若干上回った。当初は債券売り(利回りは上昇)で反応したものの、すぐに買い戻し(利回りは低下)が入り持ち直した。パウエルFRB議長の会見でもタカ派的な発言が見られたが、長期債には買いが入った。米国株相場の下落などが相場を下支えした。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下したうえ、主要三指数も反落したことで拡大した。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。特にNASDAQ総合指数は、無リスクである米長期債利回りとほぼ変わらない異常な状態となっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は22.55から21.14へ低下した。VIX指数が20台で推移していることで、米国株は不安定方向に向かっている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.186%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・12月13日:▲1.499%⇒12月14日:予想▲1.548%(前日比で拡大:割安)
12月14日のNYダウが反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.185%から▲1.637%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.678%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.554%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.993%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.469%下回った。NYダウは、米FOMCで利上げの長期化が示され、ターミナルレート(利上げの最終到達地点)が引き上げられたことが株式相場の重しとなった。利上げ幅は市場予想通り0.50%と、4回連続での0.75%の利上げから減速したものの、声明文やパウエル米FRB議長会見では引き続き積極的な引き締め姿勢が示された。NYダウはFOMC結果公表を前に一時287ドル高まで上昇したが、パウエルFRB議長発言を受けて404ドル安まで下落し、142.29ドル安(-0.42%)で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.747%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・12月13日:▲1.724%⇒12月14日:予想▲1.786%(前日比で拡大:割安)
S&P500は反落したうえ、米国長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.747%から▲0.961%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.083%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.216%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.393%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.713%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.436%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.688%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・12月13日:▲0.117%⇒12月14日予想▲0.174%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.688%から▲1.514%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.005%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.209%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.324%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.629%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.920%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下したうえ、株価指数も反落したことで前日比で拡大した。ただ、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、ゼロ近辺で推移しており割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。