★NY株式市場では、主要三指数はNYダウは小幅に反発した一方で、S&P500指数とNASDAQ総合指数は小幅続落する展開になった。中国の厳しい新型コロナウイルス規制が微修正されるとの期待から29日の中国株が大幅に上昇し、投資家心理が改善した。半面、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長期化するとの警戒感が相場の重しとなった。中国の衛生当局は29日、新型コロナの防疫措置に関する記者会見で、高齢者へのワクチン接種強化や防疫措置の微調整の継続の方針を発表した。感染拡大を封じ込める『ゼロコロナ』政策への抗議活動が中国の主要都市で相次いだことを受け、前日には同国経済の悪化を懸念した株売りが広がっていた。過度な警戒感が和らぎ、株が買い直された。最も、市場では『中国経済を巡る懸念はしばらく続く』との見方は根強く、買いの勢いは鈍かった。30日にパウエルFRB議長の講演を控え、積極的な金融引き締めが続くと警戒されたのも相場の重しとなった。一方、米長期金利は、前日に米連邦準備理事会(FRB)高官らが金融引き締めの長期化を示唆したことが引き続き売り(利回りは上昇)を誘った。明日のパウエルFRB議長の講演や週末の11月米雇用統計など重要イベントを前に、ポジション調整目的の売りも出た。 イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇した一方で、主要三指数はまちまちの展開になったものの三指数とも縮小する展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。特にNASDAQ総合指数は、無リスクである米長期債利回りの方が益利回りを上回る異常な状態となっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は22.21から21.89へ低下した。VIX指数が20台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。ただ、徐々に低下していることから、株式市場も安定化に向かっている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.191%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・11月28日:▲1.411%⇒11月29日:予想▲1.347%(前日比で縮小:割高)
11月29日のNYダウが小幅反発したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.191%から▲1.844%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.879%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.755%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲3.194%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.670%下回った。NYダウは、中国でのゼロコロナ政策に対する市民の抗議活動激化を嫌気して大きく下落した中国本土株や香港株が反発したことで米国株も上昇する場面もあったが、翌日以降に発表される経済指標やパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演などを控えた様子見姿勢が上値圧迫要因となった。NYダウは3.07ドル高(+0.01%)とほぼ横ばいで終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.751%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・11月28日:▲1.647%⇒11月29日:予想▲1.592%(前日比で縮小:割高)
S&P500は小幅続落した一方で、米国長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.751%から▲1.159%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.277%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.410%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.587%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.907%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.630%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.694%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・11月28日:+0.002%⇒11月29日予想+0.045%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは小幅続落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.694%から▲1.739%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.224%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.428%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.543%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.848%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.139%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇した一方で、株価指数は続落したものの前日比で縮小した。ただ、イールドスプレッドは債券利回りが益利回りを上回る異常な状態のため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、プラス圏となり割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。