★NY株式市場では、主要三指数は全てで反落する展開になった。CPI、PPIともにインフレがピークを打ったことを示唆する結果となった後で、今朝は寄り前に発表された10月の小売売上高が予想以上の上昇した。8ヵ月ぶりの上昇幅となり、高インフレで景気見通しが悪化していても消費需要が強いことが示された。GDP算出に使われるコントロールグループの伸びも加速し、第4四半期のGDPが3%を超える可能性があり、FEDの利上げペース減速期待が後退した。昨日の上昇を主導したグロースが売られて全体を押し下げ、主要指数はそろって反落して終了した。経済指標では小売売上高の他に10月鉱工業生産が発表され、予想を下回った。11月のNAHB住宅市場指数も予想を下回り、パンデミック直後を除いて10年ぶりの低水準となった。一方、米長期金利は、10月米小売売上高が予想を上回ったことが伝わると売り(利回りは上昇)が先行したものの、10月米鉱工業生産が予想を下回ったことが分かると買い戻し(利回りは低下)が優勢になった。11月NAHB住宅市場指数が予想より弱い内容となったことも相場の支援材料となった。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下したうえ、主要三指数は反落する展開になったことで主要三指数では拡大した。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。特にNASDAQ総合指数は、無リスクである米長期債利回りの方が益利回りを上回る異常な状態となっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は24.54から24.11へ低下した。VIX指数が20台前半で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.196%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・11月15日:▲1.309%⇒11月16日:予想▲1.398%(前日比で拡大:割安)
11月16日のNYダウが小幅反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値▲3.196%から▲1.798%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.828%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.704%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲3.143%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.619%下回った。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.754%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・11月15日:▲1.485%⇒11月16日:予想▲1.614%(前日比で拡大:割安)
S&P500は小幅反落したうえ、米国長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.754%から▲1.140%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.255%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.388%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.565%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.885%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.608%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.698%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・11月15日:+0.202%⇒11月16日予想+0.063%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは反発した一方で、米長期金利が低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.698%から▲1.761%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.242%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.446%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.561%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.866%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.157%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下した一方で、株価指数は反発したものの前日比で拡大した。ただ、イールドスプレッドは債券利回りが益利回りを上回る異常な状態のため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、プラス圏となり割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。