★NY株式市場では、主要三指数は全てで反落する展開になった。連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事のタカ派発言を受けた金利上昇を警戒し、寄り付き後は下落した。その後、ブレイナード副議長が利上げ減速が間もなく適切となるとの見通しを示すと警戒感も緩和し、上昇に転じた。しかし、戻り高値からは長期金利上昇を嫌気した売り圧力が強く、終盤にかけ再び大きく下落して終了した。一方、米長期金利は、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が『FRBは次回会合で利上げペースの減速を検討する可能性があるが、インフレ抑制に向けた取り組みが弱まったと受け止めるべきではない』と発言すると、金融政策転換期待が後退し債券売り(利回りは上昇)が出た。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇した一方で、主要三指数が反落する展開になったものの、NYダウとNASDAQ総合指数は縮小し、S&P500指数は拡大した。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。特にNASDAQ総合指数は、無リスクである米長期債利回りの方が益利回りを上回る異常な状態となっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は22.52から23.73へ上昇した。VIX指数が20台前半で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.197%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/13-▲1.556%
22/10/24-▲1.001%、22/11/7-▲1.049%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・11月11日:▲1.254%⇒11月14日:予想▲1.246%(前日比で縮小:割高)
11月14日のNYダウが反落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値▲3.197%から▲1.951%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.980%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.856%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲3.295%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.771%下回った。NYダウは、利上げペースの減速期待を背景にプラス圏で推移したが、取引終盤に利益確定売りが強まった。先週の木曜、金曜の2日間で1234ドル上昇したNYダウは211.16ドル安(-0.63%)と3日ぶりに反落した。軟調にスタート後、ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)副議長が近い将来の利上げペース減速の可能性を示したことで216ドル高まで上昇する場面もあった。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.755%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
22/10/24-▲1.378%、22/11/7-▲1.311%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・11月11日:▲1.449%⇒11月14日:予想▲1.457%(前日比で拡大:割安)
S&P500は反落した一方で、米国長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.755%から▲1.298%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.412%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.545%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.722%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲3.042%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.765%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.700%
・直近イールドスプレッド縮小:22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
22/10/24-+0.363%、22/11/7-+0.384%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・11月11日:+0.230%⇒11月14日予想+0.229%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは反落した一方で、米長期金利は上昇したことでイールドスプレッドは前日比でわずかに縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.700%から▲1.929%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.408%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.612%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.727%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲3.032%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.323%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇した一方で、株価指数は反落したものの前日比でわずかに縮小した。ただ、イールドスプレッドは債券利回りが益利回りを上回る異常な状態のため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、プラス圏となり割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。