★NY株式市場では、主要三指数は全てで続落する展開になった。週次失業保険申請件数が依然低水準で労働市場の健全性を証明したため金利高を警戒した売りに寄り付き後は下落した。NYダウは押し目買いや一部企業の予想を上回った決算を好感した買いに一時プラス圏を回復したものの、FRBのタカ派姿勢を懸念した売りやハイテクの売りに押され上昇は限定的となった。さらに、雇用統計の発表を控えた警戒感に主要株式指数は引けにかけて下げ幅を拡大して終了した。一方、米長期金利は、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが長引くとの思惑から債券売りが優勢となった。もっとも、米ISM非製造業指数が予想を下回る結果となったため、一巡後は安全資産とされる債券に買いが入る場面も見られた。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇した一方で、主要三指数も続落する展開になったものの、NYダウは縮小する一方でS&P500指数とNASDAQ総合指数はわずかに拡大した。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。特にNASDAQ総合指数は、無リスクである米長期債利回りの方が益利回りを上回る異常な状態となっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は25.86から25.30に低下した。しかし、VIX指数が20台半ばで推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.202%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/27-▲1.573%、 22/10/6-▲1.628%
22/10/13-▲1.556%、22/10/24-▲1.001%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・11月2日:▲1.182%⇒11月3日:予想▲1.159%(前日比で縮小:割高)
11月3日のNYダウは続落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比でにわずかに縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.202%から▲2.043%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲3.067%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.943%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲3.382%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.858%下回った。NYダウは、前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げの長期化が示唆されたことで、金利の上昇が引き続き嫌気されたほか、翌日に発表される米10月雇用統計への警戒感も重しとなった。NYダウは朝方に420ドル安まで下落後、37ドル高まで上昇したものの、146.51ドル安(-0.46%)で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.758%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/12-▲1.927%、22/10/6-▲1.919%
22/10/13-▲1.892%、22/10/24-▲1.378%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・11月2日:▲1.550%⇒11月3日:予想▲1.562%(前日比で拡大:割安)
S&P500は大幅続落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比でわずかに拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.758%から▲1.196%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲2.307%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.440%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.617%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.937%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.660%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.704%
・直近イールドスプレッド縮小:22/9/27-▲0.078%、22/10/6-▲0.049%
22/10/13-▲0.063%、22/10/24-+0.363%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・11月2日:+0.188%⇒11月1日予想+0.168%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが大幅続落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比でわずかに拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.704%から▲1.872%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.347%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.551%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.666%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.971%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲4.262%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利は上昇した一方で、株価指数は小幅反落したものの前日比では大幅縮小した。イールドスプレッドは債券利回りが益利回りを上回る異常な状態のため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、プラス圏となり割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。