★NY株式市場では、主要三株価指数は反落する展開になった。ロシアのプーチン大統領がタカ派姿勢を弱める発言をしたため地政学的リスクが低下、また、英国のトラス首相が財務相を交代、法人税率引上げ凍結撤回を発表したため金融市場混乱への懸念も緩和し投資家心理改善で寄り付き後は上昇した。しかし、10月ミシガン大消費者信頼感指数、期待インフレ率が予想を上回ると連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げ観測がさらに強まり長期金利上昇とともに売りが再燃して下落に転じた。前日に大幅高となったあとだけに、週末でポジションを手仕舞う売りも散見され、引けにかけ下げ幅を拡大して終了した。一方、米長期金利は、英国債相場の下落につれた売り(利回りは上昇)が出たほか、米ミシガン大学が発表した消費者の期待インフレ率が予想を上回ったことが相場の重しとなった。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇した一方で、主要三指数は反落する展開になったが、NYダウは縮小する一方で、S&P500指数とNASDAQ総合指数は拡大する展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は31.94から32.02に低下した。しかし、VIX指数が30台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.211%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/12-▲1.664%、22/9/27-▲1.573%
22/10/6-▲1.628%、22/10/13-▲1.556%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・10月13日:▲1.556%⇒10月14日:予想▲1.549%(前日比で縮小:割高)
10月14日のNYダウは反落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で大幅に縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.211%から▲1.662%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.677%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.553%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.992%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.468%下回った。NYダウは、大手金融機関の決算がおおむね良好な結果となり、上昇してスタートしたものの、寄り後に発表された10月ミシガン大1年先期待インフレ率速報値が前月から伸びが加速したことで、積極的な金融引き締めへの警戒感が強まった。前日に827ドル高と大幅反発したNYダウは403.89ドル安(-1.34%)と大幅反落した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.763%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/9/12-▲1.927%、22/9/27-▲1.989%
22/10/6-▲1.919%、22/10/13-▲1.892%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・10月13日:▲1.892%⇒10月14日:予想▲1.955%(前日比で拡大:割安)
S&P500は大幅反落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.763%から▲0.808%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.914%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.047%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.224%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.544%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.267%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.713%
・直近イールドスプレッド縮小:22/9/12-▲0.198%、22/9/27-▲0.078%
22/10/6-▲0.049%、22/10/13-▲0.063%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・10月13日:▲0.062%⇒10月14日予想▲0.110%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは大幅反落した一方で、米長期金利は上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.713%から▲1.603%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.069%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.273%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.388%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.693%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.984%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇した一方で、株価指数は大幅反落したことで前日比では拡大した。イールドスプレッドは平均値の1/15超まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.100%割れと割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。