★NY株式市場では、NYダウは小幅反発した一方で、S&P500指数とナスダック総合指数は続落する展開になった。 国際通貨基金(IMF)が世界国内総生産見通しを下方修正したほか、重要インフレ指標の発表を控え長期金利が最近の高水準付近に再び近づき警戒感から売りが先行し、寄り付き後は下落した。その後、NY連銀の9月1年期待インフレ率の低下で大幅利上げ観測が緩和し、買戻しが強まり一時上昇に転じた。しかし、引けにかけ、英中銀のベイリー総裁が市場機能回復のために実施していた緊急国債購入を計画通り今週で終了することを表明すると金融市場混乱への警戒感に伴う売りが再燃し、上げ幅を縮小した。ハイテクは下落で終了した。一方、米長期金利は、米NY連銀が発表した1年先のインフレ期待が1年ぶりの低水準を付けたことで債券買い(利回りは低下)が強まる場面もあったが、上値は重かった。12日の9月米卸売物価指数(PPI)や13日の9月米消費者物価指数(CPI)を控える中、売りが出やすい地合いとなった。イールドスプレッドからは、米長期金利は上昇する一方で、主要三指数はまちまちの展開になったもののイールドスプレッドは全てで縮小する展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも引き続き下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は32.45から33.63へ上昇した。VIX指数が30台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.213%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/4/19-▲1.713%、22/9/12-▲1.664%
22/9/27-▲1.573%、22/10/6-▲1.628%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・10月10日:▲1.752%⇒10月11日:予想▲1.691%(前日比で縮小:割高)
10月11日のNYダウは小幅反発したうえ、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.213%から▲1.522%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.535%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.411%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.850%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.326%下回った。アムジェンやウォルマートが上昇し、ダウ平均が5日ぶりに小幅反発したものの、S&P500とナスダック総合はともに5日続落した。米10年債利回りが先週末の3.88%台から一時4%を上回り、3.94%台に上昇したことや、今週発表される米9月消費者物価指数(CPI)などの経済指標や大手金融機関の第3四半期決算発表への警戒感も重しとなった。NYダウは405ドル高まで上昇後、36.31ドル高(+0.12%)と小幅ながら5日ぶりに反発して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.764%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/4/19-▲1.989%、22/9/12-▲1.927%
22/9/27-▲1.989%、22/10/6-▲1.919%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・10月10日:▲2.050%⇒10月11日:予想▲2.034%(前日比で縮小:割高)
S&P500は小幅続落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.764%から▲0.730%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.835%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.968%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.145%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.465%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.188%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.715%
・直近イールドスプレッド縮小:22/9/12-▲0.198%、22/9/22-▲0.233%
22/9/27-▲0.078%、22/10/6-▲0.049%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・10月10日:▲0.161%⇒10月11日予想▲0.150%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは続落した一方で、米長期金利が上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.715%から▲1.565%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.029%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.233%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.348%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.653%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.944%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利は上昇一方で、株価指数は続落したものの前日比では縮小した。イールドスプレッドは平均値の1/11超まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.1%台半ばで割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。