★NY株式市場では、主要三指数の全てで続伸する展開になった。8月消費者物価指数(CPI)の発表を控え、市場では『米インフレのピークアウト観測が高まっており、株高が進んだ』との声が聞かれ寄り付き後は上昇した。NY連銀の8月期待インフレが大幅低下したことも投資家心理改善に繋がり相場をさらに押し上げた。同時に、9月連邦公開市場委員会(FOMC)の大幅利上げ観測は根強く、午後に入り長期金利が大きく上昇に転じると、主要株式指数は上げ幅を縮小して終了した。一方、長期金利は、この日実施された3年債と10年債入札が『低調』と受け止められると、債券売り(利回りは低下)が優勢となった。利回りは一時3.3751%前後と約3カ月ぶりの高水準を付けた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇したうえ、主要三指数も続伸したことでイールドスプレッドは主要3指数全てで縮小する展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は22.79から23.87へ上昇した。VIX指数は20台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.223%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/4/19-▲1.713%、 22/8/17-▲1.845%
22/8/24-▲1.809%、22/9/6-▲1.900%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・9月9日:▲1.781%⇒9月12日:予想▲1.702%(前日比で縮小:割高)
9月12日のNYダウが続伸したほか、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.223%から▲1.521%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.524%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.400%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.839%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.315%下回った。NYダウは、ドル安が続いたことや、インフレのピークアウト期待が高まったことで幅広い銘柄が上昇した。米欧の支援を受けたウクライナ軍の優勢が伝えられたことも投資家心理の改善につながったとの見方もあった。翌日に注目の米8月消費者物価指数(CPI)の発表を控える中、NYダウは終日プラス圏で推移し、229.63ドル高(+0.71%)で終了した。一時、352ドル高まで上昇した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.769%
・直近イールドスプレッド縮小: 21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
22/8/24-▲2.137%、22/9/6-▲2.199%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・9月9日:▲2.023%⇒9月12日:予想▲1.924%(前日比で縮小:割高)
S&P500が続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.769%から▲0.845%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.945%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲2.078%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲2.255%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.575%下回った。20年3月23日の6.222%から▲4.298%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.725%
・直近イールドスプレッド縮小:22/4/19-▲0.513%、22/8/24-▲0.404%
22/9/1-▲0.414%、22/9/6-▲0.410%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・9月9日:▲0.255%⇒9月12日予想▲0.166%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.726%から▲1.560%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲2.013%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲2.217%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.332%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.637%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.928%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、指数も続伸したことで前日比では縮小した。イールドスプレッドは平均値の1/10まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.1%台半ばと割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。