★NY株式市場では、米主要三指数の全てで続落する展開になった。8月ADP雇用統計が予想を下回る伸びにとどまったため大幅利上げ観測がいったん後退し、寄り付き後は一時上昇した。しかし、本年の連邦公開市場委員会(FOMC)投票権を持つクリーブランド連銀のメスター総裁が2023年に政策金利を4%以上に引き上げ据え置くべきとタカ派姿勢を表明した。そのため、長期金利が一段と上昇すると長期にわたる金融引き締めを警戒した売りが加速し、下落に転じた。引けにかけても、月末で戻りなく、主要株式指数は下げ幅を拡大し終了した。一方、長期金利は、米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)による大幅利上げ観測を背景に、債券売り(利回りは上昇)が優勢となった。利回りは一時3.1945%前後と6月28日以来約2カ月ぶりの高水準を付けた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が大幅上昇した一方で、主要三指数は続落したものの、イールドスプレッドは三指数全てで縮小する展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は26.21から25.87へ低下した。VIX指数は20台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.226%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/4/19-▲1.713%、22/6/6-▲2.009%
22/8/17-▲1.845%、22/8/24-▲1.809%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・8月30日:▲2.015%⇒8月31日:予想▲1.976%(前日比で縮小:割高)
8月31日のNYダウが続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.226%から▲1.250%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.250%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.126%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.565%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.041%下回った。NYダウは、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めの長期化見通しが強まる中、米国の長短金利の上昇が続いたことが株式相場の重しとなった。前日までの3日間で1500ドル下落したNYダウは280.44ドル安(-0.88%)と4日続落した。朝方に175ドル高まで上昇後、前日終値を挟んでもみ合ったが、終盤に売られ、ほぼ安値で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.770%
・直近イールドスプレッド縮小: 21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
22/6/6-▲2.329%、22/8/24-▲2.137%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・8月30日:▲2.333%⇒8月31日:予想▲2.290%(前日比で縮小:割高)
S&P500が続落した一方で、米長期金利は大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.770%から▲0.480%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.579%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.712%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.889%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.209%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.932%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.728%
・直近イールドスプレッド縮小:22/4/19-▲0.513%、22/6/8-▲0.716%
22/8/5-▲0.647%、22/8/24-▲0.404%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・8月30日:▲0.551%⇒8月31日予想▲0.487%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが続落した一方で、米長期金利は大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.728%から▲1.241%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.692%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.896%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲2.011%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.316%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.607%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、指数が続落したものの前日比では縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.4%台後半と割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。