★26日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がジャクソンホールでの講演で、長期にわたり金融引き締め策が必要になると強調すると同時に、時期尚早の金融緩和に転じるリスクを警告した。物価安定には時間ががかかるほか、FRBの力強い行動が必要になると表明したため、FRBの積極的な利上げを織り込む米債券売り(利回りは上昇)が強まった。
そのため、日米金利差が拡大する展開となり、それに連れてドル/円相場も底堅い展開が続いている。
日米2年債金利差(赤線)では、7月28日に2.933%まで縮小したが、8月30日には3.518%まで拡大する展開となっている。また、日米10年債金利差(青線)では、8月1日に2.391%まで縮小したが、8月30日には2.888%まで拡大する展開になっている。
ドル/円も8月1日終値で131.65円まで円高・ドル安が進んだものの、日米金利差拡大により138円台半ばまで円安基調が続いている。
今後も基本的にはFRBによる利上げを織り込む形で、米債金利は上昇基調にあるものの日銀による金融緩和は継続するとみられることから、日米金利差の拡大によるドル高・円安は継続しやすい。
よって、ドル/円では押し目買い狙い目線が継続する。
シティグループが算出しているエコノミック・サプライズ指数(びっくり指数)は、各種経済指標と事前予想との食い違い(かい離幅)を指数化し、ゼロ(予想通り)を挟んで、上下(プラス・マイナス)で示した指数である。雇用や生産などの各種経済指標が事前の市場予想と比べてどうだったかを指数化したもので、実績が予想を上回れば指数は上昇、逆に下回れば下落する仕組みとなっている。
この指数は市場の期待値に対して上回るものが多いのか、それとも下回るものが多いのかを示す指数である。市場の期待値に対して上回る指標が多ければ当然に株価や通貨が高くなりやすい。一方で、市場の期待値を下回り続けると、市場参加者が景気の先行き懸念が生じることから、遅行して株価や通貨などが下落しやすい。
8月29日付の日米欧のびっくり指数は、日本:+4.4、米国:▲23.3、欧州:▲32.3となっている。
日本は7月8日に▲66.1まで低下したところから戻り基調となっている。米国は、6月23日の▲74.8から戻り基調となっている。そして、欧州は7月28日の▲105.0からの戻り基調となっており、日米欧ともに戻り基調が継続している。
ただ、びっくり指数からは、円が一番強く、米ドル、ユーロの順に弱くなっている。
びっくり指数からすれば、日本は経済指標に関して予想を上回るものが増えてきているため、買われやすくなっている。そのため、日米金利差からはドル買い・円売りが強まる一方で、びっくり指数からは円買い・ドル売りが強まる展開になっていると言える。
ドル/円のボラティリティが高いのは、こういう点にあるのかもしれない。
基本的には日米金利差拡大に基づくドル買い・円売りが強まりやすい。そのため、経済指標等でドルが下押しした際は、押し目買いの目線で見ていきたい。