★NY株式市場では、米主要三指数の全てで続落する展開になった。値ごろ感の買いに寄り付き後は一時上昇した。しかし、8月消費者信頼感指数や7月JOLT求人件数の予想を上回る良好な結果を受けて大幅利上げ観測が強まり、長期金利の上昇に連れて売られ、大幅下落に転じた。さらに、台湾が中国のものとされるドローンに初の威嚇射撃を行ったとの報道を受け、地政学的リスク上昇を警戒した売りに押され一段安となった。引けにかけても、警戒感がくすぶり戻りなく主要株式指数は下落で終了した。一方、長期金利は、欧米中銀による大幅利上げ観測が高まる中、世界的な景気減速への懸念から債券買いが入ったものの、8月米消費者信頼感指数が予想を大幅に上回ったことが伝わると一転売りが優勢となり値を消した。利回りは一時3.1493%前後と6月29日以来約2カ月ぶりの高水準を付ける場面があった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が小幅上昇した一方で、主要三指数は続落したことで、イールドスプレッドは三指数全て拡大する展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は26.21から26.21へ変わらずだった。VIX指数は20台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.227%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/4/19-▲1.713%、22/6/6-▲2.009%
22/8/17-▲1.845%、22/8/24-▲1.809%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・8月29日:▲1.964%⇒8月30日:予想▲2.007%(前日比で拡大:割安)
8月31日のNYダウが続落した一方で、米長期金利が小幅上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.228%から▲1.221%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.219%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.095%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.534%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.010%下回った。NYダウは、前日まで2日続落したことで、朝方は買い戻しが優勢となったものの、米欧中銀高官からタカ派的発言が相次いだことで、利上げの長期化見通しや、利上げによる景気後退(リセッション)懸念が株式相場の重しとなった。NYダウは一時106ドル高まで上昇したものの、451ドル安まで下落し、308.12ドル安(-0.96%)で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.771%
・直近イールドスプレッド縮小: 21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
22/6/6-▲2.329%、22/8/24-▲2.137%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-▲4.499%
20/3/23-▲6.222%
・8月29日:▲2.280%⇒8月30日:予想▲2.333%(前日比で拡大:割安)
S&P500が続落した一方で、米長期金利は小幅上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.771%から▲0.438%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.536%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.669%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.846%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.166%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.889%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.729%
・直近イールドスプレッド縮小:22/4/19-▲0.513%、22/6/8-▲0.716%
22/8/5-▲0.647%、22/8/24-▲0.404%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・8月29日:▲0.517%⇒8月30日予想▲0.552%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが続落した一方で、米長期金利は小幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.730%から▲1.178%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.627%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.831%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.946%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.251%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.542%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が小幅上昇した一方で、指数が続落したものの前日比では拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.5%台半ばと割高感が非常に強まっている。そのため、2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。