★NY株式市場では、NYダウとS&P500指数は小幅反落した一方で、ナスダック総合指数は反発する展開になった。週次失業保険申請件数の増加で、雇用減速を警戒した売りに、寄り付き後は下落した。さらに、ペロシ下院議長の台湾訪問を受け、台湾を包囲した軍事演習中の中国が試射したミサイルが台湾上空通過の可能性が高いとの報道を受け、地政学的リスクの上昇を警戒した売りに一段安となった。NYダウは終日軟調に推移した。ただ、7月米雇用統計を前に投資家の様子見ムードも強く、方向感に欠ける展開だった。 金利の低下で、ナスダック総合指数は底堅く推移し、プラス圏を維持し引けた。一方、長期金利は、英中銀(BOE)が示した見通しで世界的な景気後退懸念が意識されたほか、台湾情勢の緊迫懸念が依然として強く、相対的に安全資産とされる米国債に買い(利回りは低下)が入りやすい地合いとなった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下した一方で、主要三指数がまちまちの動きになったことで、イールドスプレッドはNYダウとS&P500指数は拡大した一方で、ナスダック総合指数は縮小した。そのため、ナスダック総合指数はより割高感が強まる展開になった。全般的に割高感が強いことから上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は21.95から21.44へ低下した。VIX指数は20台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.235%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/4/19-▲1.713%、22/6/6-▲2.009%
22/6/27-▲2.030%、22/7/20-▲2.073%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・8月3日:▲2.200%⇒8月4日:予想▲2.220%(前日比で拡大:割安)
8月4日のNYダウが小幅反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.235%から▲1.015%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.006%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.882%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.321%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.797%下回った。NYダウは、翌日の米7月雇用統計の発表を控え様子見姿勢が強まった。前日に416ドル上昇したNYダウは85.68ドル安(-0.26%)と小幅に反落した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.774%
・直近イールドスプレッド縮小: 21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
22/6/6-▲2.329%、22/6/27-▲2.461%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・8月3日:▲2.562%⇒8月4日:予想▲2.573%(前日比で拡大:割安)
S&P500が小反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.774%から▲0.201%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.296%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.429%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.606%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.926%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.649%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.736%
・直近イールドスプレッド縮小:22/4/19-▲0.513%、22/6/8-▲0.716%
22/6/27-▲0.738%、22/7/20-▲0.769%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・8月3日:▲0.797%⇒8月4日予想▲0.791%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが続伸した一方で、米長期金利は低下したもののイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.736%から▲0.945%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.388%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.592%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.707%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.012%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.303%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利は低下した一方で、指数は続伸したことで前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.8%割れと割高感が強まった。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。