★NY株式市場では、主要3指数とも全てで反落する展開になった。市場予想を下回った中国の製造業指数を嫌気した売りやペロシ下院議長の台湾訪問計画報道を受け、地政学的リスクの上昇を警戒した売りに、寄り付き後は下落した。月初で売り買いが交錯する中、7月製造業PMI改定値が予想外に下方修正されたほか、ISM製造業指数が2年ぶり低水準に落ち込んだため、景気後退懸念が根強く上値を抑制した。一方、長期金利は、7月米ISM製造業景気指数が予想を上回ったことで債券売りが出たものの、下押しは限定的だった。米景気減速への懸念が根強い中、相対的に安全資産とされる米国債に買いが入りやすかった。利回りは一時2.5714%前後と4月7日以来約4カ月ぶりの低水準を付けた。 今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下したうえ、主要三指数が反落したことで、イールドスプレッドは主要三指数は全てで拡大した。そのため、割高感はやや後退する展開になった。ただ、割高感が強いことから上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレが高止まりしている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は21.33から22.84へ上昇した。VIX指数は20台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.236%
・直近イールドスプレッド縮小: 22/4/19-▲1.713%、22/6/6-▲2.009%
22/6/27-▲2.030%、22/7/20-▲2.073%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・7月29日:▲2.266%⇒8月1日:予想▲2.353%(前日比で拡大:割安)
8月1日のNYダウが小幅反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.236%から▲0.883%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.873%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.749%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.188%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.664%下回った。NYダウは、主要3指数は7月月間でそろって2020年以来の大幅高となったが、8月入りとなったこの日は週末発表の米7月雇用統計などを控えて様子見姿勢が強まった。NYダウは朝方に204ドル安まで下落後、7月ISM製造業PMIが予想を上回ったことなどを好感し126ドル高まで上昇したが、46.73ドル安(-0.14%)で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.774%
・直近イールドスプレッド縮小: 21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
22/6/6-▲2.329%、22/6/27-▲2.461%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・7月29日:▲2.641%⇒8月1日:予想▲2.734%(前日比で拡大:割安)
S&P500が反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.774%から▲0.040%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.135%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.268%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.445%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.765%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.488%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.737%
・直近イールドスプレッド縮小:22/4/19-▲0.513%、22/6/8-▲0.716%
22/6/27-▲0.738%、22/7/20-▲0.769%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・7月29日:▲0.921%⇒8月1日予想▲1.007%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.737%から▲0.730%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.172%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.376%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.491%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.796%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.087%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下したうえ、指数は反落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.0%台は回復したものの、割高感が継続している。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。