★ドル/円市場では、日米金利差だけで変動するわけではないが、金利差拡大なら円安基調になりやすく、金利差縮小なら円高になりやすく市場分析には参考になる。
6月14日の日米2年債金利差(赤線)3.468%、日米10年債金利差(青線)3.229%がピークとなり、その後はやや縮小気味になっている。また、日米2年債金利差よりも日米10年債金利差の方が縮小傾向が強まっている。7月27日終了時では、日米2年債金利差3.097%、日米10年債金利差2.589%と縮小傾向にある。
これは、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが、先行きの景気減速感を強めるとの思惑から、米10年債利回りが低下傾向になってきていることが要因である。
昨日のNY市場では、連邦公開市場委員会(FOMC)で市場の予想通り6月に続き0.75%利上げを決定した。さらにインフレが目標値にほど遠く利上げを継続することが適切としたためドル買いが一段と強まった。その後、パウエル議長が米国経済には柔軟性があり景気後退は予想していないが、支出、生産、労働市場にも減速の兆候があると指摘、今後の異例な大幅な利上げはデータ次第としたため、9月の大幅利上げ確率が低下、2年債利回りの低下に伴いドル売りが優勢となった。
また、シティグループが算出しているエコノミック・サプライズ指数(びっくり指数)は、各種経済指標と事前予想との食い違い(かい離幅)を指数化し、ゼロ(予想通り)を挟んで、上下(プラス・マイナス)で示した指数である。雇用や生産などの各種経済指標が事前の市場予想と比べてどうだったかを指数化したもので、実績が予想を上回れば指数は上昇、逆に下回れば下落する仕組みとなっている。この指数は市場の期待値に対して上回るものが多いのか、それとも下回るものが多いのかを示す指数である。市場の期待値に対して上回る指標が多ければ当然に株価や通貨が高くなりやすい。一方で、市場の期待値を下回り続けると、市場参加者が景気の先行き懸念が生じることから、遅行して株価や通貨などが下落しやすい。
7月27日時点で、米国は―52.4、ユーロ圏は―94.7、日本は―41.4となっており、日米欧ともにマイナス圏で市場予想を下回る経済指標が多いことを示している。
日米を比較しても共にマイナス圏にあるが、日本の指数が米国の指数を上回っていることから円買い・ドル売りになりやすい。
FRBの利上げの影響により先行きの景気減速感が出始めていることから、米債券買い(利回りは低下)につながりやすくなっている。一方で、日銀は大規模金融緩和を継続していることから、金利の変動差が小幅なことから米国の金利の変動が日米の金利差につながりやすい。
米国では利上げや量的引き締めを継続すればするほど、インフレの抑制には効果はあるものの景気を犠牲にすることになる。そのため、米長期金利は伸び悩む傾向が強まることから、2年債も連れて金利上昇が抑制されやすく日米金利差は拡大しにくい状態になりやすい。