★NY株式市場では、主要3株価指数は全て続落する展開になった。中国が新型コロナ規制の緩和を発表したため、世界経済の成長期待を受けた買いに、寄り付き後は上昇した。NY連銀のウィリアムズ総裁がインタビューで『経済が強く、景気後退は基本シナリオではない』と発言したことも買いを後押した。しかし、その後発表された、6月の消費者信頼感指数や地区連銀製造業指数が予想以上に悪化し、景気減速懸念に伴う売り圧力が強まり下落に転じた。引けにかけて、下げ幅を拡大し一時500ドル超下げた。一方、長期金利は、欧州債相場が下落すると米国債にも売り(利回りは上昇)が波及したものの、6月米消費者信頼感指数が予想を下回り、2021年2月以来の低水準を記録すると買い戻し(利回りは低下)が進んだ。米国株が下げに転じたことも安全資産とされる米国債の買いを促した。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下したうえ、主要三指数ともに続落したことでイールドスプレッドは主要三指数は全てで拡大した。全般割高感はやや後退したものの、上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は26.95から28.36へ上昇した。VIX指数は20台後半で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.243%
・直近イールドスプレッド縮小: 21/1/11-▲2.611%、22/4/19-▲1.713%
22/6/6-▲2.009%、22/6/27-▲2.030%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・6月27日:▲2.030%⇒6月28日:予想▲2.144%(前日比で拡大:割安)
6月28日のNYダウは続落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.243%から▲1.099%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.082%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.958%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.397%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.873%下回った。NYダウは、上昇してスタートしたものの、寄り後に発表された6月消費者信頼感指数が大きく悪化したことで景気後退懸念から売りが強まった。NYダウは朝方に446ドル高まで上昇後、491.27ドル安(-1.56%)とほぼ一日の安値で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.774%
・直近イールドスプレッド縮小: 21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
22/6/6-▲2.329%、22/6/27-▲2.461%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・6月27日:▲2.461%⇒6月28日:予想▲2.509%(前日比で拡大:割安)
S&P500が続落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.774%から▲0.265%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.360%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.493%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.670%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.990%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.713%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.743%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-▲1.066%、22/4/19-▲0.513%
22/6/8-▲0.716%、22/6/27-▲0.738%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・6月27日:▲0.738%⇒6月28日予想▲0.889%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは続落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.743%から▲0.854%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.290%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.494%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.609%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.914%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.205%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下したうえ、株価も続落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.8%台後半で推移していることで、割高感が高まている。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。