★NY株式市場では、主要三指数は全て大幅に反落する展開になった。住宅、製造業、雇用関連指標の軒並み予想を下回る低調な結果に失望した売りに、寄り付き後は大幅下落した。連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げによる景気後退懸念も強まり、一段の売りに繋がった。終日軟調に推移し、NYダウは20年12月来の約1年半ぶりの安値となった。世界中で積極的な利上げが進む中、世界経済の急速な冷え込みを警戒した投資家のリスク回避の株売りが広がった。一方、長期金利は、世界中で積極的な利上げが進む中、世界経済の急速な冷え込みが警戒されて、相対的に安全資産とされる米国債に買い(利回りは低下)が入った。米国株の大幅下落も債券買いを誘った。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が大幅低下したうえ、三指数は大幅反落したもののイールドスプレッドは主要三指数は全て拡大した。全般割高感が強まっていることから、上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は29.62から32.95へ低下した。VIX指数は再び30台で推移していることで、米国株は不安定な動きが継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.246%
・直近イールドスプレッド縮小:20/10/12-▲2.847%、 21/1/11-▲2.611%
21/10/21-▲2.758%、22/4/19-▲1.713%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・6月15日:▲2.142%⇒6月16日:予想▲2.366%(前日比で拡大:割安)
6月16日のNYダウは大幅反落したうえ、米長期金利も大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.246%から▲0.880%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.860%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.736%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.175%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.651%下回った。NYダウは、
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.774%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/10/12-▲2.664%、20/12/08-▲2.666%
21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・6月15日:▲2.561%⇒6月16日:予想▲2.847%(前日比で拡大:割安)
S&P500が反落したうえ、米長期金利は大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.774%から▲0.073%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.022%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.155%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.332%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.652%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.375%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.745%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
21/11/23-1.299%、22/4/19-0.513%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・6月15日:▲0.825%⇒6月16日予想▲1.087%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは続伸したうえ、米長期金利が大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.745%から▲0.658%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.092%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.296%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.411%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.716%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.007%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅低下したうえ、株価も大幅反落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.00%台後半まで拡大したものの、割高感は継続している。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。