★NY株式市場では、主要三指数は全てで大幅続落する展開になった。連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げを警戒し、寄り付き後は下落した。さらに、中国の新型コロナ流行再燃で一部地域の再封鎖が警戒されたほか、暗号資産市場の急落などが金融不安につながり、売りが加速した。引けにかけてウォール・ストリート・ジャーナル紙が連邦準備制度理事会(FRB)高官が0.75%の利上げを容認する可能性を報じ債券利回りが一段と上昇したため下げ幅を一段と拡大した。午後に入り、米長期金利が上昇幅を拡大すると一時1000ドル超下落した。一方、長期金利は、高インフレ抑制のため米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを進めるとの見方から債券売り(利回りは上昇)が優勢となった。『FRBは0.75%の利上げの可能性』との米紙WSJの報道を受けて、債券売りが加速すると、利回りは一時3.4365%前後と2011年4月以来の高水準を記録した。なお、2年債利回りは3.4128%と07年11月以来の高水準まで上昇し、10年債利回りを上回る『逆イールド』が発生した。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が大幅上昇した一方で、三指数ともに大幅続落したもののイールドスプレッドはNYダウとナスダック総合は縮小した一方で、S&P500指数は拡大するなどまちまちの展開になった。そのため、ナスダック総合指数はイールドスプレッドは割高感が継続している。全般割高感が強まっていることから、上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は27.75から34.02へ上昇した。VIX指数は再び30台へ上昇したことで、米国株は不安定な動きは継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.247%
・直近イールドスプレッド縮小:20/10/12-▲2.847%、 21/1/11-▲2.611%
21/10/21-▲2.758%、22/4/19-▲1.713%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・6月10日:▲2.161%⇒6月13日:予想▲2.106%(前日比で縮小:割高)
6月13日のNYダウは大幅続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことからイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.247%から▲1.141%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.120%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.996%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.435%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.911%下回った。NYダウは、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利上げ観測が強まり、米10年債利回りが先週末の3.16%台から3.36%台に急上昇したことで、センチメントが大きく悪化した。NYダウは一時、1019ドル安まで下落し、876.05ドル安(-2.79%)の30516.74ドルで終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.774%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/10/12-▲2.664%、20/12/08-▲2.666%
21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・6月10日:▲2.524%⇒6月13日:予想▲2.547%(前日比で拡大:割安)
S&P500が大幅続落した一方で、米長期金利は大幅上昇したもののイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.774%から▲0.227%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.322%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.455%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.632%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.952%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.675%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.746%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
21/11/23-1.299%、22/4/19-0.513%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・6月10日:▲0.871%⇒6月13日予想▲0.863%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは大幅続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことからイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.746%から▲0.883%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.316%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.520%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.635%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.940%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.231%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、株価が大幅続落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.8%台半ばまで縮小していることで、割高感が継続している。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。