★NY株式市場では、主要三指数は全てで反落する展開になった。EUがロシア産石油の禁輸で合意し、原油価格が上昇した。インフレ懸念が再燃し、下落して始まった。また主要指数は前週に大きく上昇していたこともあり、利益確定の売りも出やすかった。石油輸出国機構(OPEC)加盟国が生産協定からロシアを排除することを検討しているとの報道で原油価格が下落、上昇に転じるも終日方向感に欠ける展開で、結局NYダウ・ナスダックともに下落した。ただ、米長期金利の上昇を受けて金融株が買われると、指数はプラス圏を回復する場面もあった。 値動きが激しい1ヶ月となったが、NYダウは小幅高、ナスダックは約2%安で5月の取引を終えた。一方、長期金利は、過去最高を記録した5月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値や良好な米経済指標を受けて、インフレリスクが改めて意識されると債券売り(利回りは上昇)が広がった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利は横ばいだった一方で、三指数が続伸したことでイールドスプレッドは全て縮小した。そのため、イールドスプレッドの割高感が若干強まった。全般割高感が強まっていることから、上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は26.54から26.19へ低下した。VIX指数は低下したものの20台半ばで推移していることから、米国株は不安定な動きは継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.251%
・直近イールドスプレッド縮小:20/10/12-▲2.847%、 21/1/11-▲2.611%
21/10/21-▲2.758%、22/4/19-▲1.713%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・5月27日:▲2.235%⇒5月31日:予想▲2.159%(前日比で縮小:割高)
6月1日のNYダウは反落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.251%から▲1.092%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.067%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.943%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.382%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.858%下回った。NYダウは、先週はNYダウが1951ドル高(+6.24%)と9週ぶりに大幅反発し、S&P500とナスダック総合もそれぞれ6.58%高、6.84%高とともに8週ぶりの大幅反発となったが、3連休明けのこの日は欧州でのインフレ高進や原油相場をにらんで神経質な展開となった。NYダウは朝方に460ドル安まで下落後、午後に27ドル高まで上昇する場面もあったが、222.84ドル安(-0.67%)と7営業日ぶりに反落して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.776%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/10/12-▲2.664%、20/12/08-▲2.666%
21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・5月27日:▲2.585%⇒5月31日:予想▲2.511%(前日比で縮小:割高)
S&P500が反落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.776%から▲0.265%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.358%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.491%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.668%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.988%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.711%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.749%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
21/11/23-1.299%、22/4/19-0.513%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・5月27日:▲1.048%⇒5月31日予想▲0.956%(前日比で縮小:割高)
NASDAQは反落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.749%から▲0.793%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.223%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.427%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.542%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.847%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.138%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、株価が反落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.9%台後半まで縮小したことで、割高感が強まった。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。