★NY株式市場では、NYダウとS&P500指数は続落した一方で、ナスダック総合指数は小幅反発するする展開になった。米国経済が景気後退入りするとの警戒感に、寄り付き後は下落した。高インフレや連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めへの警戒感も強く、終日軟調に推移した。不透明感が強く、荒い展開が続く中、値ごろ感からハイテク株が買われ、ナスダック総合指数は小幅高で引けた。市場では『マージンコール(追い証)を迫られた個人投資家や投機筋による売りが出た』との声も聞かれ、NYダウは一時600ドル超下落した。ただ、一時はプラス圏を回復するなど本日も不安定な値動きとなった。一方、長期金利は、中国経済の不透明感に加えて、米金融引き締め加速への警戒感から世界的に株価が下落すると、安全資産とされる米国債に買いが入った。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下した一方で、三指数はまちまちの動きになったものの三指数ともにイールドスプレッドは拡大した。しかし、イールドスプレッドの観点からはまだ割高感が残っている。そのため、上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は32.56から31.77へ低下した。VIX指数が30台半ば乗せとなっていることで、米国株は不安定な動きは継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.255%
・直近イールドスプレッド縮小:20/10/12-▲2.847%、 21/1/11-▲2.611%
21/10/21-▲2.758%、22/4/19-▲1.713%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・5月11日:▲2.247%⇒5月12日:予想▲2.340%(前日比で拡大:割安)
5月12日のNYダウは6日続落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.255%から▲0.915%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.886%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.762%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.201%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.677%下回った。NYダウは、インフレ高進懸念や米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めへの警戒感から引き続き売りが優勢となったが、売り一巡後は買い戻しが優勢となった。NYダウは103.81ドル安(-0.33%)と6日続落した。80ドル高まで上昇後、午後の取引で一時605ドル安まで下落したが、終盤に上昇し下落幅を縮小した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.776%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/10/12-▲2.664%、20/12/08-▲2.666%
21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・5月11日:▲2.692%⇒5月12日:予想▲2.775%(前日比で拡大:割安)
S&P500は続落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.776%から▲0.001%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.094%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.227%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.404%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.724%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.447%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.751%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
21/11/23-1.299%、22/4/19-0.513%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・5月11日:▲1.118%⇒5月12日予想▲1.193%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは小幅反発した一方で、米長期金利が低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.751%から▲0.558%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.986%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.190%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.305%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.610%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.901%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下した一方で、株価は小幅反発したものの前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.1%台後半まで縮小していることで、割高感が残っている。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。