★NY株式市場では、主要三指数は全て下落する展開になった。中国のコロナ流行状況が改善したとの報道で世界経済成長の減速懸念が後退し、寄り付き後は上昇した。しかし、4月米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったため、連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めにもかかわらず高インフレが定着すると同時に、成長減速にもつながるとの懸念も広がり、下落に転じた。ハイテクの売りも加速し、引けにかけて主要株式指数は下げ幅を拡大した。ただ、一時は420ドル超上昇するなど総じて不安定な値動きとなった。一方、長期金利は、4月米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことが分かると売り(利回りは上昇)が先行した。利回りは一時3.0739%前後まで上昇した。ただ、売り一巡後は材料出尽くし感から買い戻し(利回り低下)が入った。米国株相場の下落で、相対的に安全資産とされる米国債に買いが入った面もあった。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が低下したうえ、三指数も下落したことで拡大した。ただ、イールドスプレッドの観点からはまだ割高感が残っている。そのため、上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は32.99から32.56へ低下した。VIX指数が30台半ば乗せとなっていることで、米国株は不安定な動きは継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.255%
・直近イールドスプレッド縮小:20/10/12-▲2.847%、 21/1/11-▲2.611%
21/10/21-▲2.758%、22/4/19-▲1.713%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・5月10日:▲2.066%⇒5月11日:予想▲2.181%(前日比で拡大:割安)
5月11日のNYダウは5日続落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.255%から▲1.074%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.045%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.921%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.360%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.836%下回った。NYダウは、米4月消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る強い伸びとなったことでハイテク株を中心に幅広い銘柄が下落した。NYダウは326.63ドル安(-1.02%)と5日続落し、連日で年初来安値を更新した。朝方はインフレのピークアウトが近いとの見方からNYダウが423ドル高まで上昇する場面もあったが、買い一巡後は米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めへの警戒感が強まった。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.776%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/10/12-▲2.664%、20/12/08-▲2.666%
21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・5月10日:▲2.533%⇒5月11日:予想▲2.689%(前日比で拡大:割安)
S&P500は反落したうえ、米長期金利も低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.776%から▲0.087%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.180%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.313%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.490%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.810%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.533%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.751%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
21/11/23-1.299%、22/4/19-0.513%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・5月10日:▲0.959%⇒5月11日予想▲1.153%(前日比で拡大:割安)
NASDAQは反落したうえ、米長期金利が低下したことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲1.751%から▲0.598%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.026%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.230%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.345%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.650%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.941%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が低下したうえ、株価は反落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.1%台半ばまで縮小していることで、割高感が強まっている。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。