★NY株式市場では、主要三指数全てで続落する展開になった。4月雇用統計で雇用の伸びが予想を上回り労働市場のひっ迫が再確認されたため連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを警戒し、寄り付き後は大幅下落した。金利動向に左右される形で、一時上昇に転じる局面もあったが、戻り売り圧力が強く、終日軟調に推移した。米長期金利の上昇を受けて高PER(株価収益率)のハイテク株に売りが集まると、一時520ドル超下落した。引けにかけては、押し目買いに支えられ、下げ幅を縮小した。一方、長期金利は、4月米雇用統計で労働市場のひっ迫が続いていることが示されると、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを積極的に進めるとの観測が改めて強まり債券売り(利回りは上昇)を誘った。利回りは一時3.1444%前後と2018年11月以来約3年半ぶりの高水準を付けた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が大幅上昇した一方で、三指数ともに続落したものの縮小した。イールドスプレッドの観点からは割高感が強まっている。そのため、上値追いよりも下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は31.20から30.19へ低下した。VIX指数は低下したものの30台乗せとなっていることで、米国株は不安定な動きは継続しやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.256%
・直近イールドスプレッド縮小:20/10/12-▲2.847%、 21/1/11-▲2.611%
21/10/21-▲2.758%、22/4/19-▲1.713%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・5月5日:▲1.885%⇒5月6日:予想▲1.803%(前日比で縮小:割高)
5月6日のNYダウは続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.256%から▲1.453%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.423%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.299%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.738%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.214%下回った。NYダウは、注目された米4月雇用統計は強弱まちまちとなったものの、米10年債利回りが3.14%台まで上昇し、2018年11月以来約3年半ぶりの高水準を更新したことで、ハイテク・グロース株を中心に売りが強まった。NYダウは軟調にスタートすると、一時523ドル安まで下落後、98.60ドル安(-0.30%)と下落幅を縮小して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.776%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/10/12-▲2.664%、20/12/08-▲2.666%
21/1/11-▲2.320%、22/4/19-▲1.989%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・5月5日:▲2.289%⇒5月6日:予想▲2.224%(前日比で縮小:割高)
S&P500が続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.776%から▲0.552%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.645%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.778%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.955%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.275%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.998%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.752%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
21/11/23-1.299%、22/4/19-0.513%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・5月5日:▲0.716%⇒5月6日予想▲0.672%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲1.752%から▲1.080%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.507%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.711%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.826%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.131%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.422%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、株価は続落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.6%台後半まで縮小していることで、割高感が強まっている。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。