★NY株式市場では、主要三指数は全て反落する展開になった。ウクライナのゼレンスキー大統領が国連安保理で演説を行いロシアの行動を非難、米、欧州連合(EU)が6日に対ロ制裁強化を発表する計画が明らかになり、景気などへの影響を警戒した売りに、寄り付き後は下落した。その後、連邦準備制度理事会(FRB)の副議長指名のブレイナード理事が早くて5月連邦公開市場委員会(FOMC)で、保有資産縮小を開始する可能性を示唆し金利が急伸したためハイテク株が大きく売られた。終日軟調に推移し、引けにかけて主要株式指数は下げ幅を拡大した。一方、長期金利は、米連邦準備理事会(FRB)高官の中でハト派最右翼として知られるブレイナードFRB理事が金融引き締めに積極的な姿勢を示したことで、債券売り(利回りは上昇)が広がった。利回りが一時2.5655%前後と2019年5月以来の高水準を付けた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が大幅上昇した一方で、主要三指数は反落する動きになったものの、イールドスプレッド三指数ともに縮小する展開になった。割高感が強まっていることから上値追いよりも、下押し調整的な動きに注意が必要である。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は18.57から21.03へ上昇した。VIX指数が再び20台乗せとなったことで、米国株は不安定な動きになりやすい。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.267%
・直近イールドスプレッド縮小:20/10/12-▲2.847%、 21/1/11-▲2.611%
21/10/21-▲2.758%、22/3/28-▲2.060%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・4月4日:▲2.093%⇒4月5日:予想▲1.978%(前日比で縮小:割高)
4月5日のNYダウが反落した一方で、米長期金利も大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.267%から▲1.289%平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.248%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.124%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.563%下回った。20年3月23日の6.017%から▲4.039%下回った。NYダウは、ハト派で知られるブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事がインフレ抑制のためにバランスシートの縮小を急ぐべきだと発言したことで早期金融引き締めへの警戒感が強まった。公益や生活必需品などのディフェンシブ株がおおむね堅調となった一方、半導体などのハイテク株や鉄道や空運などの輸送株などが幅広く下落した。NYダウは朝方に190ドル高まで上昇したが、ブレイナード発言を受けて急反落。終盤に355ドル安まで下落し、280.70ドル安(-0.80%)で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.780%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/10/12-▲2.664%、20/12/08-▲2.666%
21/1/11-▲2.320%、22/3/28-▲2.313%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・4月4日:▲2.359%⇒4月5日:予想▲2.267%(前日比で縮小:割高)
S&P500が反落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.780%から▲0.513%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.602%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.735%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.912%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.232%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.955%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.760%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
21/11/23-1.299%、22/3/28-0.842%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・4月4日:▲0.858%⇒4月5日予想▲0.781%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが反落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.760%から▲0.979%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.398%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.602%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.717%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲2.022%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.313%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、株価は反落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.7%後半まで縮小していることで、割高感が非常に強まっている。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。