★NY株式市場では、主要三指数は全て続伸する展開になった。ロシアとウクライナの停戦交渉でかなりの進展が報じられ、停戦期待に寄り付き後は上昇し一時410ドル超上げた。雇用や住宅価格関連指標が予想を上回ったほか、企業の合併、買収の報道が投資家心理の改善に繋がった。長期金利の低下でハイテク株も続伸して相場を後押しし、終日堅調に推移した。一方、長期金利は、原油先物相場の下落でインフレ懸念が後退し、長期債が買われ(利回りは低下)利回り曲線の平坦化が進んだ。2年債利回りが一時10年債利回りを上回る『逆イールド』が発生する場面もあった。 今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が大幅低下した一方で、主要三指数は続伸する動きになったものの、イールドスプレッド三指数ともに僅かに拡大する展開になった。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まっていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価が売られやすい。米国株のVIX指数は19.63から18.90へ低下した。VIX指数が20台割れとなってきたことで、徐々にボラティリティも落ち着いてきており相場が安定方向に向かっている。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.269%
・直近イールドスプレッド縮小:20/10/12-▲2.847%、 21/1/11-▲2.611%
21/10/21-▲2.758%、22/3/28-▲2.060%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月28日:▲2.060%⇒3月29日:予想▲2.082%(前日比で拡大:割安)
3月29日のNYダウが続伸した一方で、米長期金利が大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で僅かに拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.269%から▲1.187%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲2.144%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲2.020%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.459%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.935%下回った。NYダウは、ウクライナとロシアの停戦交渉進展期待が高まったことや、原油相場が下落しインフレ高進懸念が和らいだことも株式市場の支援となった。NYダウは朝方に300ドル超上昇すると、その後、前日終値付近まで反落する場面もあったが、終盤に再び上昇し338.30ドル高(+0.97%)と4日続伸して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.781%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/10/12-▲2.664%、20/12/08-▲2.666%
21/1/11-▲2.320%、22/3/28-▲2.313%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月28日:▲2.313%⇒3月29日:予想▲2.319%(前日比で僅かに拡大:割安)
S&P500が続伸した一方で、米長期金利が大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で僅かに拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.781%から▲0.462%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.550%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.683%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.860%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲2.180%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.903%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.762%
・直近イールドスプレッド縮小:21/1/11-1.066%、21/2/16-1.144%
21/11/23-1.299%、22/3/28-0.842%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月28日:▲0.842%⇒3月29日予想▲0.847%(前日比で僅かに拡大:割安)
NASDAQが続伸した一方で、米長期金利は大幅低下したことでイールドスプレッドは前日比で僅かに拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.763%から▲0.916%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.332%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.536%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.651%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.956%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲3.247%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅低下した一方で、株価は続伸したものの前日比で僅かに拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲0.8%半ばまで縮小していることで、割高感が非常に強まっている。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。