★NY株式市場では、主要三指数ともに反落する展開になった。ロシア、ウクライナ停戦交渉への期待や値ごろ感からの買いに、寄り付き後は上昇した。しかし、中国での旅客機墜落事故を受けたボーイングの下げがNYダウを押し下げ、下落に転じた。1銘柄でNYダウを44ドルほど押し下げた。さらに、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が全米企業エコノミスト協会(NABE)で講演し、インフレ高進を抑制するため、必要とあれば大幅な利上げも辞さないとするタカ派姿勢を再表明したため金利上昇を警戒し、売りに一段と拍車がかかり、一時410ドル超下げた。一方、長期金利は、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のタカ派発言が伝わると、積極的な金融引き締めに前向きとの受け止めから債券売り(利回りは上昇)が広がった。利回りは一時2.3186%前後と2019年5月以来の高水準を付けた。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が大幅上昇した一方で、主要三指数は反落したものの、イールドスプレッドは三指数ともに縮小した。そのため、割高感が急速に強まっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価がが売られやすい。米国株のVIX指数は23.87から23.53へ低下した。VIX指数が30台割れとなったものの、20超えの高水準で推移していることで、ボラティリティの高い相場が継続している。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.271%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月18日:▲2.496%⇒3月21日:予想▲2.382%(前日比で縮小:割高)
3月21日のNYダウは反落した一方で、米長期金利は大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.271%から▲0.889%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.844%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.720%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲2.159%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.635%下回った。NYダウは、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のタカ派的発言を受けた金利上昇や、ウクライナ情勢の不透明感、欧州での新型コロナウイルスの感染再拡大などが相場の重しとなった。先週に1810ドル高(+5.50%)と6週ぶりに大幅反発したNYダウは、201.94ドル安(-0.58%)と6日ぶりに反落した。パウエルFRB議長がインフレ高進に強い懸念を示し、必要なら0.50%の利上げも検討すると発言したことで一時413ドル安まで下げ幅を広げた。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.782%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月18日:▲2.751%⇒3月21日:予想▲2.611%(前日比で縮小:割高)
S&P500が小反落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.781%から▲0.170%と平均値より上方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.258%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.391%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.568%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.888%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.611%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.763%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月18日:▲1.262%⇒3月21日予想▲1.134%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが反落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.763%から▲0.629%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲1.045%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.249%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.364%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.669%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.960%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇した一方で、株価は反落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.1%前半まで縮小したことで、割高感が強まっている。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。