★NY株式市場では、主要三指数ともに大幅続伸する展開になった。ロシアとウクライナの停戦交渉に進展があったとの報道を好感し、寄り付き後は上昇した。連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で市場の予想通り0.25%の利上げを決定し、ブラード・セントルイス連銀総裁が0.5%の利上げを主張したほか、スタッフ予測で、本年平均7回の利上げ予想が明らかになると、積極的な引き締めによる景気後退懸念や政策の間違いを警戒した売りが加速し、NYダウは一時下落に転じた。その後の会見で、パウエル議長が政策の柔軟性や経済の強さを強調し、景気後退のリスクが特に高まっていないと言及すると、買いが再燃しダウはプラス圏を回復した。引けにかけて上昇幅を拡大した。一方、長期金利は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利予想(ドット・チャート)では、年内の利上げ回数が今回を含めて7回と12月の3回から増加した。市場では『金融引き締めに積極的』との受け止めが広がり、債券売り(利回りは上昇)を誘った。利回りは一時2.2422%前後と2019年5月以来の高水準を付ける場面があった。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の会見が進むにつれて、債券を買い(利回りは低下)戻す動きが広がると下げ幅を縮めた。 今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が上昇したうえ、主要三指数も大幅続伸した。イールドスプレッドは三指数ともに大幅に縮小し、割高感が急速に強まっている。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価がが売られやすい。米国株のVIX指数は29.83から26.67へ低下した。VIX指数が30台割れとなったものの、20超えの高水準で推移していることで、ボラティリティの高い相場が継続している。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.272%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月15日:▲2.682%⇒3月16日:予想▲2.561%(前日比で縮小:割高)
3月16日のNYダウは大幅に続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で大幅縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.272%から▲0.711%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.665%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.541%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.980%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.456%下回った。NYダウは、ウクライナとロシアの停戦合意への期待などから上昇してスタートしたものの、米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場予想通りに政策金利が0.25%引き上げられ、FOMCメンバーのFF金利見通しで、年内に計7回の利上げが示唆されたことで一時売りが強まった。しかし、取引終盤にかけて再び買いが優勢となった。前日に約600ドル上昇したダウ平均は531ドル高まで上昇後、153ドル安まで下落し、518.76ドル高(+1.55%)と大幅に続伸して終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.782%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月15日:▲2.989%⇒3月16日:予想▲2.829%(前日比で縮小:割高)
S&P500が大幅に続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で大幅縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.781%から+0.048%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲1.040%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲1.173%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.350%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.670%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.393%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.764%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月15日:▲1.524%⇒3月16日予想▲1.343%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが大幅続伸したうえ、米長期金利も上昇したことでイールドスプレッドは前日比で大幅縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.764%から▲0.421%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.836%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲1.040%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲1.155%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.460%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.751%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が上昇したうえ、株価も大幅続伸したことで前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いが続いている。NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.3%半ばまで縮小したことで、割高感が急速に強まった。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。