★NY株式市場では、NYダウはわずかに反発した一方で、S&P500指数とナスダック総合指数は続落する展開になった。ロシアとウクライナの第4回目の停戦交渉を控え、期待感に寄り付き後は上昇した。しかし、交渉が15日まで中断されたほか、連邦準備制度理事会(FRB)による連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げを警戒して下落に転じた。中国の一部地域が新型コロナ流行拡大で経済封鎖されたため世界経済の鈍化懸念も再燃し、さらなる売り圧力となった。引けにかけ、金融などの上昇が支えとなり、NYダウはプラス圏を回復した。金利の上昇を嫌気したハイテク株の売りは続き、ナスダックは終日軟調となった。一方、長期金利は、15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利上げがほぼ確実視されており、インフレ高止まりを背景に利上げペースの加速観測も浮上した。市場では『委員らの金利見通し(ドット・チャート)でタカ派寄りの予想が示される』との声も聞かれ、債券売り(利回りは上昇)が優勢となった。利回りは一時2.1437%前後と2019年7月以来の高水準を付ける場面があった。 今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利が大幅上昇したことで、主要三指数まちまちの動きになったものの、イールドスプレッドは三指数ともに縮小した。株価指数が軟調でもそれ以上に米長期金利が上昇すると割高感が強まる展開。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価がが売られやすい。米国株のVIX指数は30.75から31.77へ上昇した。VIX指数が30台で推移していることで、ボラティリティの高い相場が継続している。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.272%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月11日:▲2.906%⇒3月14日:予想▲2.760%(前日比で縮小:割高)
3月14日のNYダウが小幅反発したうえ、米長期金利も大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲3.272%から▲0.512%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.466%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.342%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.781%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.257%下回った。NYダウは、ロシアとウクライナの停戦合意への期待で上昇してスタートしたものの、停戦交渉に進展がなかったことで失速した。今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げが予想される中、原油などの商品相場の下落や、長期金利の上昇、中国・深圳での新型コロナウイルスの感染拡大などもセンチメントの悪化につながった。NYダウは一時451ドル高まで上昇したが、1.05ドル高(+0.00%)とほぼ横ばいで終了した。アメリカン・エキスプレスが3%近く上昇した一方、ナイキ、インテルが3-4%下落し、アップル、シェブロン、セールスフォース、ウォルト・ディズニーも2%超下落した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.781%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月11日:▲3.199%⇒3月14日:予想▲3.091%(前日比で縮小:割高)
S&P500が続落した一方で、米長期金利が大幅に上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割高)した。平均値の▲2.781%から+0.310%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.778%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.911%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲1.088%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.408%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.131%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.764%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月11日:▲1.685%⇒3月14日予想▲1.615%(前日比で縮小:割高)
NASDAQが続落した一方で、米長期金利が大幅上昇したことでイールドスプレッドは前日比で縮小(米国10年債金利に対して米国株は割高)した。平均値の▲1.764%から▲0.149%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.564%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.768%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.883%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.188%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.479%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利が大幅上昇一方で、株価が続落したものの前日比で縮小した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。ただ、NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.6%前半でスプレッドで推移。平均値を上回ってきたことで割高感がやや強まった。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。