★NY株式市場では、主要三指数は全て続落する展開になった。ロシアのプーチン大統領がウクライナとの停戦交渉で前向きな動きがあると発言したとの報道で、停戦期待に寄り付き後は上昇した。しかし、3月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値が予想を下回ったほか、欧州訪問中のハリス副大統領やウクライナ外相がプーチン大統領が外交手段に前向きな姿勢は見られないと報道を否定したため停戦期待が後退し上げ幅を縮小した。バイデン大統領が追加制裁を発表したほか、3月FOMCでの利上げを警戒した売りも強まり、引けにかけて下げに転じた。一方、長期金利は、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げがほぼ確実視される中、プーチン露大統領の発言が材料となり債券売り(利回りは上昇)が先行した。ただ、クレバ・ウクライナ外相がプーチン氏の発言を否定すると買い戻し(利回りは低下)が入り持ち直した。米国株の失速も相場を下支えした。今後も米長期金利の動向には注意が必要となる。イールドスプレッドからは、米長期金利はほぼ横ばいだった一方で、主要三指数も続落したことで、イールドスプレッドは三指数ともに拡大した。前日比で拡大したことで割安感がやや強まった。イールドスプレッドでは、米長期金利の動向が重要なポイントになる。
世界的な経済成長による景気回復に連れたインフレ懸念が高まってきている。特に、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐタカ派姿勢を強まていることから、米長期金利が上昇することでイールドスプレッドが縮小しやすく株価は売られやすい地合いになっている。そして、米国金利上昇は世界的な金利上昇を招くことになり、世界的な株価にとって、ネガティブな材料となりやすい。また、ウクライナ情勢の緊迫化が続くなか地政学リスクから株価がが売られやすい。米国株のVIX指数は30.23から30.75へ上昇した。しかし、VIX指数が30台で推移していることで、ボラティリティの高い相場が継続している。
NYダウの割高の目安は3.00%近辺、S&P500は3.00%割れ、ナスダックは1.5%以下が昨年からの割高の目安となっている。一方で割安の目安では、イールドスプレッドがNYダウ:4.0%台、S&P500:3.8%~4.0%台、NASDAQ:2.3%~2.5%台で割安感からの反発となりやすい。割安感となるイールドスプレッドを大幅に上回っていることから、相場が落ち着くと戻りも大きくなりやすい。
★米国市場のイールドスプレッドは、米国債金利と米国株益利回りを比較する指標である。株式市場は国債市場よりリスクが高いことから、株式市場に割高感が生じ国債市場に割安感が生じれば、投機筋は株式を売って国債を買う。また、国債市場に割高感が生じ株式市場に割安感が生じれば、国債を売却して株式を買うことになる。そのため、株式市場の天底を探るひとつの参考指標となる。
○米10年国債金利とNYダウ:2011/4/21以降の平均▲3.272%
・直近イールドスプレッド縮小:20/09/1‐▲2.867%、20/10/12-▲2.847%
21/1/11-▲2.611%、21/10/21-▲2.758%
(NYダウが割高・米国10年債割安の状態)
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲4.226%、19/8/5-▲4.102%、
20/2/28-▲4.541%、20/3/23-6.017%
(NYダウが割安・米国10年債割高の状態)
・3月10日:▲2.840%⇒3月11日:予想▲2.870%(前日比で拡大:割安)
3月11日のNYダウが続落した一方で、米長期金利はほぼ横ばいだったことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲3.272%から▲0.402%と平均値より上方かい離したことで割高になった。19年1月3日の大底▲4.226%から▲1.356%下回った。19年8月5日の大底▲4.102%を▲1.232%下回った。20年2月28日の大底▲4.541%から▲1.671%下回った。20年3月23日の6.017%から▲3.147%下回った。NYダウは、ロシア・ウクライナの停戦合意への期待で堅調にスタートしたものの、ロシアが戦線を拡大していると報じられたことや、バイデン米大統領がロシアを最恵国待遇から外す方針を示したこと、3月ミシガン大消費者信頼感指数速報値が2011年9月以来の水準に悪化したことなどが重しとなった。NYダウは朝方に341ドル高まで上昇したが、229.88ドル安(-0.69%)とほぼ一日の安値圏で終了した。
○米10年国債金利とS&P500:11/4/21以降の平均▲2.781%
・直近イールドスプレッド縮小: 20/08/27-▲2.677%、20/10/12-▲2.664%
20/12/08-▲2.666%、21/1/11-▲2.320%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲3.869%、19/8/5-▲4.002%、
19/8/15-▲4.179%、20/2/28-4.499%
20/3/23-▲6.222%
・3月10日:▲3.127%⇒3月11日:予想▲3.191%(前日比で拡大:割安)
S&P500が続落した一方で、米長期金利はほぼ横ばいだったことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は前日比で割安)した。平均値の▲2.781%から+0.410%と平均値より下方かい離したことで割安になった。また、19年1月3日の大底となった▲3.869%を▲0.678%下回った。また、19年8月5日の大底となった▲4.002%を▲0.811%下回った。19年8月15日の▲4.179%を▲0.988%下回った。20年2月28日の大底▲4.499%から▲1.308%下回った。20年3月23日の6.222%から▲3.031%下回った。
○米10年国債金利とNASDAQ:11/4/21以降の平均▲1.764%
・直近イールドスプレッド縮小:18/12/3-▲1.198%、21/1/11-1.066%
21/2/16-1.144%、21/11/23-1.299%
・直近イールドスプレッド拡大:19/1/3-▲2.179%、19/8/15-▲2.383%、
19/8/15-▲2.498%、 20/3/16-▲4.094%
・3月10日:▲1.608%⇒3月11日予想▲1.686%(前日比で拡大:割安)
NASDAQが続落した一方で、米長期金利はほぼ横ばいだったことでイールドスプレッドは前日比で拡大(米国10年債金利に対して米国株は割安)した。平均値の▲1.764%から▲0.078%平均値より下方かい離したことで割高になった。また、19年1月3日の大底となった▲2.179%に対しては▲0.493%下回った。19年8月5日の大底となった▲2.383%に対して▲0.697%下回った。19年8月15日の大底となった▲2.498%に対して▲0.812%下回った。20年2月28日の大底2.803%から▲1.117%下回った。20年3月16日の▲4.094%から▲2.408%下回った。
NASDAQのイールドスプレッドは、米長期金利はほぼ横ばいだった一方で、株価が続落したことで前日比で拡大した。イールドスプレッドは以前より半分以下まで縮小しているため、引き続き割高感から利益確定売りが出やすい地合いとなっている。ただ、NASDAQ総合指数のイールドスプレッドは、▲1.6%後半までスプレッドが拡大したものの、平均値を下回ってきたことで割高感はやや弱まった。2%台に拡大するまでは割安とは言えず、売られやすい地合いが継続する。
※PERの発表が時間的に遅行することから、前営業日の数値を使って当日終了時の予想を算定している。
※毎日イールドスプレッドを掲載していますので、米国株式市場の買われ過ぎ・売られ過ぎなど過熱感の目安としてください。